豊島逸夫の手帖

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金が下がるシナリオ

2006年10月24日

昨日の日経マネーセミナー。雨にもかかわらず、事務局の人達の予想を上回る250名の参加者数(普通は応募者数に比し、実際の入場者数は少ないものなのだ)。急遽、学士会館内の補助席まで追加され、最後まで一人も動かない聴衆の皆さんの熱い視線に煽られた感じで、話すほうにも思わず力が入りました。

後半の(ファンクラブまであるという)池崎キャスターとの掛け合いでも、彼女のナビに乗せられ、活字にはできない大胆な価格予想とか本音をいつのまにか喋らされてました。NHK出身でニュースをきっちり読む訓練を経てきているので、筆者のような友達と喋るようなノリに合わせるのに苦労されていた様子。男性聴衆の視線が舞台左の彼女のほうに流れるのを感じたのはオヤジの僻みか(笑)。

特に相場が軟調で参加者が不安を感じている時だけに、金価格が下がるシナリオに特に時間を割いたつもり。

要は、金の出番がなければ金の需要は減る。その出番は、インフレ、そしてデフレ(信用リスク増大)の局面。そのどちらでもなければ株、債券のポートフォリオで充分のはず。金の出番はない。いま、金が下がっているのも、Goldilocks=ゴールディロックス経済と呼ばれる"not too hot, not too cold"熱すぎず寒すぎずの"インフレなき完全雇用"に近づいているとの認識が背景にある。

でも、キャプテン バーナンキの舵取りが少しでも狂えば、マクロ経済指標は敏感に反応し、経済はtoo hot(インフレ)かtoo cold(デフレ)に傾く。とても金の出番はないと楽観的に考えられる状況ではないでしょ、という話をした。

中国経済の成長率が7%程度に減速すれば、これも金価格下げ要因になりうる。ここぞとばかりに投機筋の売りが集中すると思われる。ただ、13億人の国民の心をつなぎとめるのに、当局が高度経済成長を維持することは絶対の必須条件。中国では日本以上に、金の切れ目が縁の切れ目なのだから。それに仮に7%まで減速したとして、短期的には高速道路から一般道路に降りたときに止まったように感じる錯覚に似たショックは感じられるだろうが、スピードメーターは立派に7%成長を示しているわけだ。

中国に出張するたびに、何処へ行っても夜の新宿歌舞伎町みたいな人ごみにもまれながら、この人達が最低限の生活をするだけでも今後どれだけの資源が必要かを思う。そういう現場感覚が大事と述べた。

あとは、中東が平和になるシナリオとか、米国民がパーティーもゴルフも自粛して過剰消費を慎み、せっせと貯蓄に励めば、例の双子の赤字も根本から解決の目途が立つよ とも話した。誰が見ても現実味は薄いシナリオだから失笑が洩れたが。

話は尽きず、用意したスライドで説明できなかったものもあり、事務局の方々も続編を是非とのこと。次回は、池崎美盤ファンクラブと共催にしますか(笑)。

2006年