豊島逸夫の手帖

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短期的相場観測

2006年10月20日

ここのところ、鳥の目、魚の目で見た中長期的流れの話が続いたので、今日は足元のマーケット状況を虫の目で見てみよう。

昨晩(10月19日)の欧米市場では599ドルまで戻している。

ドル安、原油高が要因とされるが、マーケットは、この上げについては未だ半信半疑の状態。(筆者の昔の同僚で、今はKITCOのアナリストをやってるジョン ナドラーがうまいこと言ってたな。表面がなんとか冷えて固まった状態の溶岩の上を歩いている感覚だと。)

今のNY市場は、ズバリ、"ヘッジファンドの売り"対"年金買い"の構図である。(これ、そのまま今月23日の日経マネーゴールドセミナーの副題でもあるのだが。)

市場内部統計データで検証すれば、NY先物買い残高は遂に200トンの大台も割り込み192トン。今年は300トンをレンジの下限に推移してきただけに、随分と減ったな、と感じる。

一方、金ETF残高は、その間でもジリジリ増え、490トンの大台に乗せた。 かたや、ロンドン市場に目を向ければ、インド中東からの現物買いが活性化。スイスの三大リファイナリー(金塊溶解製造工場)もフル回転の忙しさだとか。(なつかしいな。その一つでノイシャテルという風光明媚な湖畔に建つ工場にトレイニーとして行ったっけ。)

短期的価格変動要因としては、ドル、金利、原油、株価などが日替わりメニューで顔見世中。(ほんとに歌舞伎の顔見世みたいに、入れ替わり登場する感じだ。主役が誰か=決定打は何かとなると焦点はぼやける。)勿論、背景には金正日の姿が見え隠れする舞台である。

昨晩、業界紙のウエブサイト対談でGFMS社長ポールウオーカーが突っ込まれていた。

"あんた、たしか年内700ドルとか言ってたよね"(ギクッ...) "そのとおり。逃げも隠れもしない。その見通しは変わらない。まぁ、それが690ドルで終わったからといって、或いは2007年第一四半期にずれ込んだからといって、そこまでピンポイントには当てられないけどね。大事なのは、トレンドは、どう見ても、アップ=上しか考えられないことさ。"

560-570ドルまで下がったところがヘッジファンドのselling climax(売りのクライマックス)であった。それを目撃して傷ついた投資家心理の修復には時間を要する。でも、だいぶ傷口も乾いてきたようだ。

2006年