豊島逸夫の手帖

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ブラックフライデーからサイバーマンデーへ

2006年11月28日

先週末から米国のメディアは年末商戦開始の報道一色。例年11月23日感謝祭の週の金曜日がBlack Fridayと言われ、各店ヨーイドンで特売が始まる。ブラックとつくとギョッとするが、赤字の店もこのときばかりは黒字になるほどの盛況だとか。テレビ報道にも、日本流に言えば、ビックカメラの特売目玉商品目当てに前の晩から並ぶ客たちのようなショッパーの長い列の映像が流れる。いずこも同じ風景だ。

ところが、今年は、サイバーマンデーという現象が注目されている。オンラインショッピングが急増中で、今年は推定6000万人が、これから年末の月曜日にネット画面の"購入する"をクリックするという。何故月曜日かというと、休み明けで家に篭もりがちの日なので、ぶらぶらとネットでショッピングということになるらしい。

経済関連報道で今年は年末商戦の話題が例年以上に取り上げられるのは、やはり米国経済減速というトピックがマーケットの旬のテーマだからであろう。

金の世界の年末商戦といえば、米国のゴールドジュエリー販売動向が注目点だ。最近の四半期ごとの米国金宝飾品販売量は金消費量ベースで以下のような数字になる。

2005 2006
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3
62.7t 60.2t 77.8t 148.4t 59.5t 54.2t 71.2t

やはり例年、10-12月がダントツの売り上げなのだ。それほどに、ジュエリーが年末商戦のマストアイテムとして確立している。購入動機も、勿論プレゼントから自分へのご褒美まで様々。では日本ではどうかといえば、まだまだ発展途上の段階といわねばならぬ。

バブルはじけてから日本の宝飾需要は低迷したままである。リサーチデータなどを見ても、例えば、20-30歳代と50歳代の男性のプレゼント用ジュエリー購入が目立って落ち込んでいる。この意味するところが分かるかな?前者は"みつぐ君需要"、後者が"不倫需要"。どうも、"したごころ需要"ばかりで、肝心の妻へのプレゼントの習慣がなかなか根付かない。"釣った魚にゃ餌やらぬ"という悪しき考えが未だにはびこっている。(などと筆者も偉そうなこと言えぬが...。反省...。)

以前、ヨーロッパの既製品の手帳に妻の指輪のサイズを書き込んでおく欄があるのを見て感激したことがある。イタリアのジュエリーメーカーの社長さんに奥さんの指輪のサイズはと聞かれ、知らないと答えたら、よくそれで離婚されないな、とも言われた。

日本の宝飾市場が本当に発展するためには、このような文化的後進性が改善されねばならぬ。ゴールドの価値には、素材としての価値に加えて、愛情、思い入れを伝えるというセンチメンタルバリューがある。この後者の価値を日本人男性が理解し、実践することが必要なのだ。どうも、今日は、こそばゆい思いで書いているな(笑)。

さて、足元のマーケットは、"ドル離れ相場"が続き、640ドル台乗せ。金ETF残高も529トンから535トンへ増加ペースが加速。ユーロ高、金高の展開になってきた。

2006年