豊島逸夫の手帖

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600ドル台回復

2006年10月31日

本稿はソウルにて執筆中。

今日はソウル ゴールド コンファレンスという、韓国では初の金国際会議が開催される。主催は韓国の日本経済新聞みたいなフィナンシャル プレスというメディア。筆者も"日韓地域代表"として講演を要請された。(尤も当地では"韓日地域代表"という名刺を使っているけどね。いろいろ気を使うのだ。)

韓国でもようやく金投資への興味が芽生えてきた状況である。中国や日本の金市場成長に刺激されての現象だと思う。もともと朝鮮半島情勢に晒される土地柄ゆえ、"有事"に対する備えという発想は今更説くまでもない。アジア経済危機のときには、国民から金製品を供出してもらい、纏めて外貨に換えて急場を凌いだという国家的経験も経てきているから、金の有り難味も日本国民よりは身に沁みている。ただ、税制とか市場の未整備というインフラ不足が阻害要因であった。だから、一旦動き始めれば急速に進展する土壌はある。欧米からの専門家集団も招かれ、夕べは金市場動向に話は弾んだ。

そのマーケットだが、足元で600ドル台を回復。夕べは一時610ドル近くまで急騰したのち結局604ドル近辺で落ち着いた。

先週から続く上げの要因はなんといってもドル安である。特に、第三四半期の米国GDP成長率が1.6%と、2003年第一四半期以来の低水準まで沈んだ(未だ確定値ではないが)ことが、貴金属のみならず金融関連のマーケット全体に効いている。第二四半期が2.6%で、事前の予想も2.2%であったから、正に予想外といえる。不安視されていた住宅関連の落ち込みがずっしり効いているようで、これが"やっぱり"という悲観論を生んでいる。(金には楽観論の根拠となるのだが。)

金市場の内部要因としては、NY先物買い残高(大口投機家)が174トンまで減っているので、地合いとしては軽く新規買いが入りやすい状況ではある。(今年は概ね300トン水準を中心に増減していたから。)

全体の流れとしては、本欄で何回も指摘したことだが、560-580ドルのレベルがヘッジファンドのselling climaxであった。アンダーシュートの状況を経て、下値を確認したうえで、用心深く一歩一歩足元を固めながら(相場的には一進一退を繰り返しつつ)価格水準が切り上がっている。派手さはないが、堅調な相場つきだと感じる。

2006年