2006年9月15日
英GFMS社が昨日(9月14日)2006年前半の金需給動向、及び通年需給予測を発表した。前者については8月17日付け本欄にて既報のとおり。本稿では後者について纏める。
まずは予測値から。
2005年実績 2006年予測
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2005年実績 |
2006年予測 |
供給サイド |
新産金 |
2,522 |
2,524 |
中銀売却 |
661 |
382 |
スクラップ |
888 |
1,112 |
総供給 |
4,070 |
4,017 |
需要サイド |
宝飾用 |
2,709 |
2,205 |
工業用 |
576 |
612 |
投資用 |
700 |
822 |
ヘッジ買戻し |
86 |
378 |
総需要 |
4,070 |
4,017 |
※合計値の誤差は、小数点以下が四捨五入されているため。
コメント
― 中銀売却は前年比大幅減となるが、年前半167トンに対し後半215トンへ増加を見込む。ワシントン協定の年間売却枠は未達となろう。
― ヘッジ売りの買戻しは前年比急増前半295トンに対し、後半は83トンへ減少。
― 全体では、宝飾需要の急減とスクラップの増加分を、中銀売却減、ヘッジ買戻し増が相殺しバランスしている。
同レポートは価格予測も述べているので、金価格急落中でもあり、ここで紹介しておきたい。
結論から言うと、同社の予測は、今年中に700ドルは回復。しかし、今年前半の高値730ドル更新は来年前半まで持ち越し。600ドル、更にそれ以下への下落は"brief"短期間に留まる、というもの。かなり明解な数字だ。
まずレポートは現在マーケットに流れる弱気説に言及。米景気後退=中国経済への波及=商品相場崩壊とのシナリオを説明。そうなれば、金も影響をまぬがれず、特に宝飾需要が更に弱まろう、とする。
しかし、同レポートが、それより可能性が高いとするシナリオの根拠が、金の(コモディティー=商品ではなく)マネーとしての投資需要だ。世界経済不均衡、特に米経済対外赤字膨張の決着をもはや先延ばしはできないだろうとする。米住宅市場の不安も同時進行となり、不均衡清算の時は近いとの主張だ。米ドル不安も生じる。金投資商品の新規開発、金投資への認識向上という背景もあり、新規投資マネー(個人及び機関投資家)のおカネの重みが金市場を動かすと見る。イランなどの地政学的要因も刺激材料となろう。
さて、足元では570ドル台へ続落中。アジア中東市場では相当な現物買いが出ているが、それを上回るファンドの売りが価格を押し下げている。(スクラップ還流は600ドル以下で一服)。ここで大事なポイントは売り買いの性質だ。買いは現物の買いっぱなし。売りは600ドル以上の先物買いの売り手仕舞い、或いは新規の先物売り。先物売買は必ず手仕舞われるから需給ファンダメンタルズへの影響は中立的だ。従って、売り手仕舞いなどが一巡すれば、差し引きネットで残るのは現物の買い残高だけ。金ETFも勿論この部類に入る。ヘッジファンドなどの先物売買は短期的にダウンを奪うパンチの威力を持つが、じわじわボディーブローのように効いてくるのが現物買いなのだよ。