2006年9月25日
今週はワシントン協定の年度末。年間500トンの売却枠に100トン以上の未消化分が残り、未だに市場では駆け込み売却の噂しきり。この件の詳細は今日だか明日だかの日経夕刊"明日の勘所"で解説されるようだ。
筆者の基本的スタンスはこうだ。中銀が金売却に走ったのは、有事の金が死んで、有事にはドルで足りるという考えが席捲した時代のこと。地政学的要因が多発し有事の金が復活してからは、そもそも金を売ってドルに乗り換える必然性がなくなった。逆に中国、ロシア、中東などの中銀の金購入のほうに注目(先週末もロシアの公的金購入示唆発言が外電で流れていた)。それでも、手っ取り早い財政赤字補填策としての公的金売却は今後も散見されるだろうが(これはエコノミスト的観点から見れば、根源的赤字削減のための構造改革の痛みを回避する、その場凌ぎの禁じ手であるが。)
さて、今のマーケットのメインテーマは米国経済減速。8月21日付け本欄"米経済減速の影響"でこう書いた。
これから年末にかけて、メジャークラスのプレーヤーが参戦してくる相場の大きなテーマが米経済の減速となった。
その金市場への影響だが、インフレ懸念後退という意味では、マイナス。
しかし、金利を生まない金という観点からは金利下落は素直にプラス。
ドル利上げストップ=金利差要因によるドル安と見てもプラス。
住宅市場がハードランディングしてバブルはじけるような事態になれば、信用リスクヘッジのための金買いというシナリオもあり得る。
需給面では、世界経済の牽引役の米国がくしゃみすれば、日欧そしてエマージングも風邪ひくという現象が依然起こるだろう。
金の実需にも当然影響する。これはマイナス。
ウーム。これは判断が悩ましいな
その後、金市場はインフレ懸念後退、グローバルな経済減速シナリオを嫌気して大きく下げた。その間、マクロ経済環境で筆者に最も印象深い展開が、ドル長期金利急低下である。一時は5%以上だったのが今や4%台半ばである。これは投資家のインフレ期待度鎮静化を象徴している。同時に高金利時代突入=金価格長期下落傾向というシナリオも薄れた。
巷間語られる中国経済減速シナリオも、実際中国を歩いて、何処行っても夜の新宿歌舞伎町みたいな人の波に揉まれると、この人達を養って最低限の生活をやりくりするのでさえ、どれだけの資源が必要かを痛感するのだ。そして、この人達の気持ちを繋ぎ止めるためには、当局としても、経済過熱懸念を口にしつつも、そうやすやすと引き締めるわけにはゆかないのだという本音が伝わってくる。
ただ、問題なのは それに悪乗りする輩がマーケットを荒して、乱高下をもたらすことだろう。中国に居るとマーケットのファンダメンタルズを肌で感じ、NY、ロンドンでは悪乗りの輩の動きを肌で感じる。どちらも肌で感じないのが日本か...。