豊島逸夫の手帖

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量的緩和解除決定後の相場

2006年3月9日

日銀金融政策決定会合にて予想通りの結果となった。それを先取りし、織り込むカタチで、金価格は昨晩(3月8日)、欧米市場で540ドルにまで急落。本稿執筆時点(3月9日午後3時)ではスポット544ドルである。これまで書いてきたように、いよいよ日米欧三極同時利上げモード入りということで金利を産まない金が売られている。

しかし、底は浅い。この水準からは買いの値頃感が出てくる。実需家には"お待たせしました"という感じの下げだ。

ディーラーの発想から見れば、ここでショート(空売り)攻勢をかければ、540ドル前後に潜むストップロス(売り手仕舞い)の注文が一挙に出て530ドルまでは持ってゆけそう。とはいえ、中東関連の地政学的要因にいつ新たな火がつくとも知れず、宵越しのショートポジションなどは、やばくて抱えられない。つまり、大幅には下げにくいのだ。

注目すべきは 金ETFの残高に久々の動意が見えたこと。ここ二週間ほど423トンで止まっていたのが、440トンへ急上昇したのだ。利上げモードのなかでも増えつづけていたのだ、と改めて思う。(減っても不思議ではないと感じていた。)

利上げ現象にイールド(利回り)志向加速の兆しを見るのか、インフレ懸念の匂いを感じるのか。前者であれば利息を生まない金は売り。後者であれば、インフレヘッジの金は買い。つまるところ、両方の見方がマーケットには存在するということだろう。だから一方的な下げはなさそう。

ドル円相場は、これまで量的緩和解除をはやしすぎの感あり。材料出尽くし感から、円に手仕舞い売りが出ている。一般紙までがここまで大騒ぎすると、マーケットの反応としては、材料が陳腐化ということになる。噂で買って、ニュースで売れの典型か。

金市場に関しては、今月末のバーナンキ初登場FOMCまでは下げ圧力が続きそうな形勢ではある。但し、日本がこれから徐々に利上げモードに突入するのに対し、米国はこれまで続いた利上げサイクルの最終段階であり、いつ終了させるかが焦点。欧米市場が金利水準のベンチマークとして見るのはドル金利であり、円金利ではないから、この問題のインパクトも徐々に薄れよう。NY市場では、ドル金利の利上げ打ち止め、その後 下落モードへの転換も視野に入っているほどだ。今年後半から来年にかけての金高値更新を予測するアナリストの根拠にもなっている。

2006年