豊島逸夫の手帖

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インド爆破テロで急騰

2006年7月12日

北朝鮮ミサイル発射の影響も一巡し、マーケットの関心がドルなどのマクロ経済に戻りつつあるかと思われた矢先にインド通勤電車連続爆破事件が起こった。インド関連の地政学的要因は、市場にとって全くの想定外ゆえ、これは効いた。本稿執筆時点(7月12日朝5時)NY市場はスポット641ドル(前日比18ドル高)で推移している。為替が円高に動いているわけではないから、今日の円建て金価格も急騰となろう。

イランも相変わらず欧米の説得を撥ねつけ妥協に応じる気配がない。こうなると、日銭稼ぎの空売り筋には、いやーな展開となり、一斉にショートをカバーする(空売りを買い戻す)動きに出る。5月の急落以来、空売りも目立つようになってきたが、これで再び"ショートは怖い"というムードが強まろう。空売りを怖がる相場は上を試すしかない。

地政学的要因も、ひとつひとつの単発では一過性なのだが、日替わりメニューみたいに出ると、要注意である。

なお、インドの爆破事件を冷静に見ればインド経済に及ぼす影響は限定的と見られる。ムンバイはインドの金融センターゆえ、一時的ショックでインド株は売られるだろうが。

それより、次の地政学的リスクをかかえる国として、筆者が注意しているところがインドの隣国パキスタンである。ビンラディンが同国内に潜伏していることはほぼ間違いなさそうだし、テロの訓練基地にもなっている。核技術拡散の元凶でもある。それに対してムシャラフ大統領の対応が、何とかするからというリップサービスばかりで、欧米の不満も徐々に鬱積してきた。はっきり言って、一触即発と理解している。北朝鮮、インドの次はパキスタンをマークすべし。

しかし、月並みな表現だけど、物騒な世の中になったと痛感するね。我が国を取り巻くアジアに目を転じれば、"日本のヒステリックな反応"を非難する韓国の"日本軍国主義者の妄想"とかいうヒステリックな反応も気になるし、中国と北朝鮮の外交使節団の和やかな夕食歓談風景も気になる。上海反日暴動のときにも書いたことだが、中国、韓国、北朝鮮 対 米国、日本、台湾の対立の構図がはっきり固まったとみていい。夕べの某テレビでも、日本政府内の"敵基地"先制攻撃論の報道で、"敵地"先制攻撃と誤って読まれ一寸した騒ぎになっていたようだ。アジアのバランス オブ パワーにジャパンが否応無く引きずり込まれてゆく過程にあることを実感。日本人個人投資家にとっても地政学的リスクに対する備えが他人事ではなくなってくる過程でもある。

2006年