豊島逸夫の手帖

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金1000ドルのオプションに値がついた。

2006年7月18日

オプション市場で、(やさしく言うと)1000ドルで金を買える権利(今年年末まで有効)に1オンスあたり3ドル60セントの値がついたそうである。

初心者の為に説明しておくと、オプションは宝くじの発想だ。掛け捨てで何がしが払えば、ひょっとして大儲けできる。この場合は、もし金価格が1050ドルでもつければ、3ドル60セントの元手で50ドルの儲けになる。1000ドルで買える"権利"を買うのだから、1000ドルをつけなければ、権利を行使しなければよいだけのこと。先物と異なり、底なし沼にはまるリスクがない。専門的には、ストライクプライスが1000ドルの2006年12月限コールオプションのオプションプレミアムが3ドル60セントと言う。

更に、2007年中に2500ドルの買いをギャランティーするオプションにも値がついたという。こういう数字が絵空事とも言えなくなってきたということか。筆者の反応は???だが、ここは謙虚にマーケットに聞けということで受け止めておく。

さて、足元の相場は20ドル以上の急落で640ドルに逆戻り。"利益確定の売り"の一言に尽きる。本欄のレギュラー読者に限って、今更のように有事の金がなぜ売られるの、などと訝しがっている御仁はよもやおられぬでしょうな(笑)。

レバノン情勢は悪化の一途。外為市場では有事のドル買いで117円台乗せ。とはいえ、世界的過剰流動性の供給元ジャパンもゼロ金利解除で引き締めに転換したことでキャリートレードも姿を消し、マーケットの流動性も低下している。今週は19日(水曜日)にバーナンキ証言と米消費者物価発表という爆弾もかかえているから、とりあえずいただける儲けはいただこうという動きだ。ディスカバリーは無事帰還したが、米経済号が無事ソフトランディングできるか否かは別問題。新米キャプテン バーナンキさんの腕次第だ。見守るマーケットはとにかく不安いっぱい。

地政学的要因に関しては、株式市場も小康状態。
Sell to the sounds of cannons.
Buy to the sounds of trumpets.
大砲の音とともに売り、トランペットの音とともに買うのだそうだ。イラン情勢に打ち止めのトランペット吹きの準備が見られたとかで若干の株買い。

週末のペテルスブルグ、G-8の反応は国により様々。NHK、BSの世界のニュース見て、殆ど笑ってしまった。日本は議長総括に北朝鮮が盛り込まれたぞ一色。欧米は完全に中東"危機"対応一色。そして、当のロシアのテレビはイベントとして各首脳も参加した青少年サミットの映像を延々と流し、G-8のテーマは教育、環境、エイズだと。ついに中東も北朝鮮も一言も無かった。

さて、客観的に見て、地政学的要因の今後だが、シリアに最後通告そしてシリア参戦とエスカレートでもすれば、またぞろマーケットも反応するだろうが、シリア-レバノンの補給路空爆破壊程度では最早陳腐化し始めた様相。勿論、問題の根は深いのだが、これだけでマーケットの新規買いを持続させるのは難しい。テポドン、インド鉄道テロ、そしてレバノン侵攻と3連発で、まずは空売り(ショート)が一掃されたと見るべし。ショートしづらい相場は上を試すしかない。金ETF残高は486トンまでジワジワと増加の一途だ。年内800ドルのオプションなら値段次第で食指が動くのだが...。

2006年