2006年1月23日
新たな地政学的要因という格好の材料を貪欲に吸収し、相変わらず火を噴いている"ゴジラ相場"である。
先週末も派手に動いた。金曜日はNYで一時新高値更新の568.50ドル(2月限)を示現した途端に利益確定売りの嵐が襲い、あっという間に552.70ドルまで急降下。結局引け値は554ドル。本稿執筆時点(1月23日月曜日朝7時)ではスポット553ドル。
新高値後の急落というパターンは経験的に言えば、目先のアタマを打った(ピークをつけた)感じである。
買いは欧米勢中心。金ETFの残高は1月16日368.47トンから1月21日372.49トンへ、引き続き堅調に伸びている。
売りはアジア、中東の現物市場。リサイクル、還流、投資家の売り戻しの結果、現地の現物需給はジャブジャブである。
この組み合わせは経験的には持続性に欠けるパターンなのだが、欧米勢の買いが先物のみならずETFのようなbuy and hold(現物保有型)の類型にも拡がっているところに、従来には見られなかった力強さを感じる。機関投資家、特に年金基金というニューフェースの登場がもたらした現象であろう。
それでも、目先は天井を打ったと思う。
前回紹介したGFMS最新統計で、筆者が一番強く感じたことは、これだけ価格が上がったのに、2005年の世界の還流金は1%しか増えていないという事実だった。先高感強く、どこまで上がるか見極めようと、売りを控えていたのだろう。そういうところから、これからドッと売戻しが出そうだ。
2006年の金価格展望で、500ドルを超えると、153,000トンの軍勢を誇る地上在庫軍の売りと、オイルマネー、年金マネー、アジアマネー連合軍の買いがガチンコのぶつかり合いになると書いた状況になりつつある。 (注:インド、中国のアジアマネーは当面地上在庫軍に寝返ったようだが、いずれ再び連合軍に加勢するよ。)
ボクシングに喩えれば、欧米のモメンタム買い(勢いで買ってくるパターン)は市場にノックアウト的ドラマチックな効果を与えるが、アジアの現物売りはバリュー型(バーゲンハンターとも言われ、押し目を丁寧に拾うパターン)からの小口売り戻しの総勢なので、ボディーブローのようにジワジワ効いてくる。先週金曜日に568ドルの新高値更新を演じたあと、如何にも力尽きた感じで足元から崩れた様子などは、正にボディーブローが効いてきたなと感じざるを得ないのだ。