豊島逸夫の手帖

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中国の金最新事情

2006年8月24日

4-6月期の国別金需要動向を比較して目に付くのが中国の健闘である。インドが38%減、中東が25%減と軒並み沈むなかで、中国は1%減に留まっている。実数の内訳を見ると、宝飾54.5トン、投資1.8トン。やはり、旬のマーケットのモメンタム(勢い)か。金価格上昇による負の価格効果より、高度経済成長による正の所得効果が上回るということだろう。

従来の低付加価値型24K純金ジュエリーに加え、都市部の働く女性を中心に、18Kのファッションジュエリーの躍進が貢献している。イタリアの製品に影響されたデザインが多い。(彼らは、ミラノのデザイントレンドにinspireされた商品だと強調し、コピーなどという言葉を使うとむきになって否定するが...)

一方、投資需要は未だテイクオフ(離陸)するには至っていない。四大商業銀行は現物売買を含む金業務を既に認可されているのだが、実務上、ひとつ大きな問題が進行をブロックしている。税制である。現物売買となると、付加価値税の対象になるのだが、現状、銀行内では同税処理の為のインフラが皆無なのだ。しかも、同税は、地方政府がそれぞれ違うシステムで徴収する体系である。(元々、中国の税制は地方主導とのこと)。つまり、大銀行のなかで、支店ごとに異なるシステムが必要になる。その結果、現状では、各銀行とも金製錬業者からコンサインメント(委託在庫)を受け、当日販売分を右から左へつなぐことで手数料を得るカタチを取っている。実績もこれまで8トン程度。従って、銀行金売買業務の主体は口座取引となっている。その実績残高は73トンに達する。(なお、付加価値税は17%だが、あくまで各流通段階における付加価値に対する課税である。)

今後の展開としては、税制問題がクリアされるまでは、口座取引主体に銀行経由の金売買が発達しそう。流通形態としては、あの膨大な国土をカバーする支店ネットワークを持つのは四大商業銀行以外考えられない。全土に広がる各支店が顧客の注文を受け本店に発注し、それをまとめて上海金取引所につなぐカタチである。現物のコンサイメントは母店(各地域の中心店舗)に限定される。
以上、実務上の問題は残るが、大きな流れでは、中国の金投資が今後急成長するのは間違いないところだ。金市場における中国要因の本当の出番はこれから始まる。

2006年