豊島逸夫の手帖

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北朝鮮核実験の影響 パート2

2006年10月11日

これまで北朝鮮関連の材料は、欧米市場にとって所詮、"対岸の火事"であり、切迫感はなかった。しかし、今回は違う。こちらがビックリするほどの関心を示している。昨日は日中、札幌出張だったのだが、夜は欧米の連中から自宅に問い合わせのメール、電話が相次ぐ状況。日本政府の反応は如何?hawkish(タカ派)の安倍政権というレッテルもあり、日本の核武装化の可能性を聞かれる。

日本が強硬な制裁を実行すると、中韓には難民が押し寄せ、自暴自棄になった北朝鮮は本当に核兵器使用に及ぶやもしれぬと恐れる。DMZ(38度線)を挟み、米軍ピンポイント爆撃、それに対する韓国、そして北朝鮮の戦線マップ、シナリオがメディアでは説明される。"対岸"に身を置くと、一段と想像力も掻き立てられると見える。

いずれにせよ、今回の問題は、これまでの北朝鮮関連とはマグニチュードが異なるのは事実。特に究極にはキューバ危機以来の海上封鎖の可能性も視野に入る制裁案などを考慮すれば、一過性で終わりそうにはない。

足元ではヘッジファンド売り手仕舞いの後遺症が後を引き、マーケットの地合いが弱いなかでの新たな地政学的要因の登場というタイミングとなった。昨日も述べたように、これで再上昇機運が一気に高まるような状況ではない。夕べも原油下落に押され5ドルほど反落。570ドル台の足固めが続く。

しかし、中長期的には、イラク、イランそして北朝鮮という三正面を米軍が対峙せねばならぬ状況ということは、地政学的要因も間違いなく複雑化したということだ。

本欄で繰り返し述べてきたことだが、地政学的要因に便乗して先物買いで一儲けなどという発想は危険である。北朝鮮が核実験を強行したからといって、直ぐにやみくもに金買いに走るべきではない。まずは勉強してほしい。その意味では、長期的には個人投資家の大切な財産を地政学的リスクから守る、或いはヘッジするというニーズを、特に日本人投資家として考えさせられる今回の衝撃的でき事ではないだろうか。

財産にもテロ対策が必要な時代と痛感する。有事の金というような言葉もこれまで日本人投資家にはピンとこなかったが、最近のセミナーの質疑応答のなかで、徐々に現実的に受け止める人たちが増えていることも実感する。

すわ有事の金買いラッシュや如何に、などという短絡的反応ではなく、日中問題も含めアジアの中の日本というポジションが自分の資産運用にどのような影響を持つのか、という発想で考えるべきだ。

このあたりも、日経プラス1フォーラム、そして日経マネー「ゴールド・セミナー」でじっくり語りたい。色々お喋りしたいこと山積みで時間が足りるかが心配。

2006年