豊島逸夫の手帖

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ゴールド最前線の最新事情

2006年5月17日

直近の海外金急落に円高が重なり、投資家の動きは二極化している。先物では、本欄でもしばしば述べてきた"劇場のシンドローム"現象が進行。観客が我先にと狭い出口に殺到しているが、その出口が緊急措置で閉ざされ、脱出できない状態。つまり、取引所がストップ安となり、値が立たず、売るにも売れない状況なのだ。

一方、現物の店頭では、各地のゴールドアドバイザーからのレポートの最大公約数として、これまでの売り戻し先行から一転、新規買いが入り始めている。これまでのほぼ一直線の上昇トレンドのなかで買うタイミングを捉えきれないでいた現物投資家にとっては、願ってもない参入の機会なのだ。まぁ、なかには、乱高下で警戒感を強める投資家もいるし、それも無理ないと思う。

そして、金を廻るマクロ投資環境の激変も見逃せない。

まず、兜町は6日連続の株安。加えて、中央青山の一件で、俄かに会計不信が強まり、信用リスクが改めて意識される状況となっている。(この影響については5月10日付け本欄"700ドル通過、いよいよバブルか"の中で詳述した。)

株を売って金に乗り換える動きが目立ち始めた。散見される、まとまった買い物がその例だ。筆者のところにも、株関連セミナーで"株手仕舞って次に何処に行くか"と言うテーマで金について指南依頼が来始めている。(この種の方々と話していると、そのキャッシュポジションのうごめきというか、所謂金余り、過剰流動性がうずうずしている状況を肌で感じるね。)そして、円高による国内金価格下落増幅効果。買いの値ごろ感も徐々に醸成されつつある。

当面は、この先物売り、現物買いのパターンが続きそうだ。

もう少し長い目で潮の流れを見れば、市場のセンチメント(=雰囲気)は、引き続き先高感強く、長期上昇トレンドは不変。相場がこのまま音を立てて崩れるような状況(所謂meltdown)にはない。底は浅い。

マクロのマネーの流れを見ても、仮に商品市場から撤退と言って、じゃぁ、いったい何処に行くの、と聞いても確かな答えは返ってこない。落語にありそうな話しだけれど、威勢よく啖呵きって三行半叩き付けた翌日に、すごすご帰ってくるイメージが連想される。

おあとがよろしいようで。

2006年