豊島逸夫の手帖

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ジャパンGDP-12.7%の衝撃

2009年2月16日

日本時間朝8時50分に発表された、この統計数字。日本国内では"おりこみ済み"である。しかし、これから今夜にかけて、この数字が外電を通じ世界を廻る。折悪しくも、週末の欧米メディアではG7記者会見での中川大臣の醜態が流れたばかり。

そこで、今夜、筆者は欧米市場の友人たちに是非とも聞いてみたいことがある。"これでも君たちはYEN(円)をsafe haven currency=安全通貨として買うのか?"ということだ。金利はゼロ、GDPは-12.7%、国の累積債務800兆円強、政局不安、少子化の国の通貨が、これからも"独歩高"を続けると彼らは思うのだろうか。

英語の教科書にこういう言い回しがあったよね。
Neighbor's grass is always greener.=隣の芝生は、より緑が冴えて見えるもの。

米国はドル、欧州はユーロの惨状を目の当たりにすると、日本の芝生のほうが緑に見えるのだろう。

振り返ってみれば、皮肉な成り行きではあった。サブプライムウイルスは世界に拡大するなかで、日本の金融機関もかなり感染したものの汚染度は欧米に比べれば比較的軽度であった。そこからYEN(円)=外為市場の駆け込み寺のような認識が芽生えた。その結果としての円独歩高。

しかし、これがジャパンのリーディングカンパニー=トヨタ、ソニー、キャノンなどの企業業績を急速に悪化させ、GDP-12.7%の主因となった。欧米経済よりマシを思って円は買われたことが、結果的に日本経済の足を引っ張る結果になっている。

ドル、ユーロ、円の三つ巴の弱さ比べとは、本欄で何回も書いてきたことだが、今回のGDP統計はこの弱さ比べにかなり影響を与えるのではないかな。敢えて楽観論を書けば、これで円独歩高に終止符が打たれ、輸出が多少なりとも回復するシナリオもありうると思う。これから各国が発動する大型財政出動の恩恵に少しでも多く預かれるかもしれない。バイアメリカンで制限されなければ という大きな条件付きではあるが...。

2009年