豊島逸夫の手帖

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モテモテのブラジルに秋波を送るイラン

2009年11月26日

昨日は中国やインドのジェラシーの話をしたが、今日はブラジルが外交の舞台でもモテモテという話。

今週、あのお騒がせイラン大統領(いまだにフルネームがややっこしくて覚えきれない)が、ブラジルを訪問している。今や、ブラジルはBRICsの一員として新興国パワーのリーダー諸国の仲間入りを果たした。そこで、同国がイラン大統領を正式に迎えるということは、イラン現政権を容認する姿勢と理解される。これは、イラン大統領にとっては、願ってもない「お墨付き」となろう。例の核開発問題はもちろんのこと、テロ支援国家というレッテル、そして「ホロコストなど無かった」という問題発言などでイランは国際的孤立状態にある。そこで数少ないサポーターを求めて、同大統領がアメリカの裏庭と言われる南米諸国を歴訪しているのだ。ボリビアとベネズエラも訪問する予定という。

ブラジル側は、「イランをengage=取り込むほうが、孤立化させるより賢明」という姿勢。その背景には、二国間経済的協力によるメリットが見え隠れする。イラン側は、ここぞとばかりに「米国の一方的覇権に対峙するため、イラン、ブラジル、ベネズエラの三国は結束すべし」とぶち上げる。

なお、ブラジルには中東首脳の訪問が相次いでいる。先々週はイスラエルのペレス大統領、そして先週はパレスチナのアバス、そして今週はイラン。今やブラジルは外交の世界でもモテモテの人気者。一方、裏庭に侵入されるような行動は、当然、米国を刺激する。日本外交がもたつく間にも、刻々世界は動いているのだね。

話題はガラッと変わって、金価格いよいよ1200ドル接近。ついに1190ドルまでつけてきた。先日、本欄でも書いたように、ここしばらくはドル安が金価格上昇要因と言われながらも、現実にはさほどユーロ高、円高が進行していなかった。しかし、昨晩に関する限りは、ふたたびドル全面安の様相。しかも、中央銀行金購入の話が依然相次いでいる。

まず、ロシア中央銀行が10月にも15.5トンの金を購入。さらに年末までに30トンを目途に買い増しかという報道も流れる。(なお、ロシア中銀は資源国通貨としてカナダドルも買い増していると発表。)

さらに、インドが、IMF売却金の残り203トンも現在の高価格で引き取るのではという観測が流れる。これは、インド準備銀行により否定はされたが。今の過熱化した市場は、お構いなしに貪欲に買い材料に仕立て上げてしまう。

そして、スリランカがIMFから金をさらに10トン購入。これはIMF発表なので事実が確認されている。

中央銀行が売り手から買い手に転換したという話は、当面、金価格の高値を支えることになろう。ただし、問題はどうやって中央銀行が大量の金を買うの?ということ。インドはたまたまIMFが金403トンを売却するので場外取引で購入できた。中国やロシアは金生産国ゆえ、自国産金の一部を買い取るという方法を使っている。つまり、中央銀行が実際に欧米の金市場でドルを売って金を買うという行動に出た例は、まだないのだ。買いの材料に敏感に反応する今の地合いの中で、そうと覚られずに大量の金をまとめて買うということは不可能に近い。どうも噂の類が先行して、囃されている面も否定できない。筆者が良く言うところの「噂で買って、ニュースで売る」というトレーダーの常套手段を連想してしまう。冷静に、どこまでが事実で、どのような手段で金を買うのか見極める必要があろう。

さてさて、こんな時期に、明後日の土曜日、日経プラスワンセミナー開催となりました。応募数はなんと900名近く。でもオペラも上演できるキャパを持つ新装なった日経ホールゆえ、充分収容できるでしょう。多分、規模から言うと、過去最大のゴールドセミナーになるのではないかな。

事務局の話だと、このブログで告知してから応募が急増したとのことで、参加者の半分以上が読者の皆さんと推定されます。そこで、今回は会場で質問票を用意しますから、そこに書きこんでいただき、筆者の講演時間の後半でその質問に答えることにします。集まった質問票を筆者は壇上で初めて見るわけで、ホントにぶっつけ本番ですが、まぁ、なんとかなるでしょう。

しかし、一読者にいつも指摘されていることなのですが、筆者が大きなセミナーで話す直前に相場が大きく動くというジンクスは、今回も生きていましたね。当然、用意されたスライドに沿って話すというより、アドリブで話すことになりますが、そのほうが鮮度の高い内容になるでしょう。例のヘッジファンドのポールセンの運用資産開示資料の原本コピーなども資料として配布します。SEC(米国証券取引委員会)に提出する13Fという四半期ごとの運用資産一覧ですが、金ETF、金鉱株など以外にも、株の銘柄別に9月末で何億ドル保有しているかなどが一目で分かり興味深いです。

さて、欧米市場は感謝祭休暇一色で閑散。ブラック・フライデーと言われるショッピングのピークにおける米国消費者動向に注目。

2009年