豊島逸夫の手帖

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金は"安全資産"で買われているのではない。

2009年2月23日

"金1000ドル"という見出しが乱れ飛ぶ中で、初めてこのブログをお読みになる方も急増しているので、ひとこと釘を刺しておきたい。

"金融危機の中で、安全資産としての金に人気が集まり...。"というようなナレーションで始まる報道が多いが、ここが根本的に間違っている!金は安全資産ではない。紙屑にならない、という意味で信用リスク(発行体の破たんリスク)は無いが、価格変動リスクはある。株、債券、ドルと同じくリスク資産である。

次に"リスク回避の動きの中で、金に投資資金が流入...。"という言い回し。正しくは、株や債券を売って金に逃避してくる(おカネを一時的に金にパーキングさせる)足の短いマネーと、リスク"分散"のために長期的な観点から株、債券も保有しつつ金にもおカネを入れてくる足の長いマネーが併存しているのだ。でも、一般ニュースで金が扱われるときの尺(放送時間)は30秒とか1分だから、そこまで詳しく説明されず、結局"安全資産の金に投資家のおカネが集まっているが、金だって値下がりするから危ない"というおきまりのパターンで終わってしまう。

でも、金も株もドルも債券も値下がりするから危ない。そもそも値下がりしない安全資産などあり得ない。銀行預金だってペイオフの時代で危ない。国債だって国の借金は800兆円を超す。

そこで、値下がりリスクは避けらないのだから 同時期に 値下がりするものと 値上がりするものをミックスして財産を守ろうというのが、FPたちが薦めるポートフォリオ運用なのだ。

なお、ここで各種資産の値下がりリスク(=価格変動性=ボラティリティー)を比較してみよう。期間は、金融危機が悪化した2007年9月から2008年12月までの間を取っている。(専門的には22-day averageである。)

原油  45.5
日経平均  41.7
プラチナ  40.2
SP500  37.6
GSCI  37.5(商品指数)
FTSE  34.5(英国株)
  29.5

要は、マーケットの実態を冷静に分析すれば、金は株より値動きは相対的に安定しているということなのだよ。

著書("金を通して世界を読む")の前書きにこう書いた。
"金融危機後、個人はリスク分散=ヘッジに動き、プロはリスクから逃避する。サブプライム危機は投資家にリスクの重みを再認識させるキッカケになったのだと痛感する"

金は、というか、金も、安全資産ではない。だからこそ、その購入法としてリスクが分散される定額積立方式が選択されているのだと思う。どこかのニュースで流れていたが"金の積立に人気。某証券系アナリストのコメント。でも金には思わぬ価格下落リスクがあります。"それだけの報道。

価格リスクがあるからこそ定額積立が選好されているのだよ。分かってないないぁ...。

2009年