豊島逸夫の手帖

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中国からのレポート パート2

2009年10月21日

昨晩は、現地の若い人たちと無礼講で言いたいこと言うセッションに参加した。筆者にとっては庶民の本音を聞く機会でもある。

話題は不動産価格高騰から始まった。上海で働く若いお母さん「マイホーム買いたいけど、狙っていた物件の価格がこの1年でなんと6倍に上がっちゃった。こんな高値圏で買う気にはならない。貯めた住宅購入用資金があるんだけど、銀行預金にしてもほとんど利息はゼロ。もったいない気がして株に手を出したら3割減ってしまった。しょうがないからナンピン買い入れてコスト薄めるつもり。でも、私の隣人は、外資金融機関のセールスに勧められてコモディティーのデリバティブを買い、なんと元本が7割減ってしまった。怖いよね。大切な将来のための虎の子資金だから、ホントは冒険ができないけど...。とにかく将来が不安。会社に勤めているから、医療保険と年金制度に加入はしているけど、年金なんて幾ら貰えると思う。月500人民元(7000円程度)にもならないわ。飢えを凌ぐ程度の額しか出ない。政府は景気刺激策でインフラ投資に財政支出を集中させているけど社会福祉にももっとカネを入れてほしい。」

北京の男性会社員「北京でも不動産価格は上がるばかり。銀行は、なんとかかんとか言いながら幾らでもカネ貸してくれるから、お金持ちたちが明らかに投資用に2軒目、3軒目の物件を購入している。2軒目の購入では融資条件が厳しくなっているのだが、抜け穴だらけ。結局、お金持ちはますます儲かる構造になっている。これで社会主義国家と言えるのかい?貧富の差は拡大するばかりだ。とくに国営企業の元経営陣が民営化で潤っているね。なんか分けのわからない援助を享受している。不動産価格上昇は大都市から中小都市にまで拡大しているよ。大都市で公共工事のおこぼれに預かった人たちが、儲かったおカネを田舎の家族に送金する。すると地方の家族は、それを貯めて住宅を購入するという具合に富が内陸部に浸透しているのさ。でも不動産購入には、色々なコネが必要だけどね。」

総じて、将来への不安を抱えながらも、かなり投機的行動に走っている感じだ。やはり国民性か。超大型財政出動と銀行貸出の急増が過剰流動性を生んでいると書いてきたが、庶民の声の中にそれを確認した。

一方で、社会的には、日本ほどではなくても、人口の老齢化、少子化が進んでいる。まだ家族の絆が強いから、結局、子どもたちが面倒を見てあげることになる。ここでも現役に金銭的負担がますますかかってゆくわけだ。そこで、なんとかしなくてはという焦りが人々を投機的行動に走らせる、という悪循環も見られた。

明日は中国の経済成長率が発表になる日。輸出とインフラ投資に支えられ、結構良い数字が出ると思う。でも、筆者が見た「実態」は、個人消費という内需主導経済への転換とはほど遠いものであった。中国経済の光と影。なんとも考えさせられる若者たちとの本音トークではあったね。

次回は、地方に住む高齢層の人たちのホントの気持ちを聞く機会を持とうと思う。今日、一日働いて、夜便で帰国。

さて、足元のマーケットはNY株のearnings season=決算発表の時期が続く。ヤフーも高収益。かなり良い数字も出ている。そこで株価が下がっているのは、まさに「企業業績改善期待の噂で買って、ニュースで売る」の典型である。

外為ではドルが気持ち反騰した程度かな。To raise or not to raise=上げるべきか否か、利上げありかなしかの議論がマーケットで戦わされる。まだ時期早尚の声が圧倒的だが、ドル安を食い止めないと、米国からマネーが逃げてゆく。そのドル安食い止め策で、利上げという選択肢もアリでは?という議論も散見される。

商品市場では、金に代わって原油がお立ち台でスポットライトを浴びている。金の値動きが重くなり、原油の値動きの軽さが際立ってきた。外為でも、円の値動きが重くなり、ユーロの値動きの軽さが目立っていたが、そのユーロも対ドル1.50の大台を前に、やや気迷い症状。EU圏でも、出口戦略の議論がかまびすしい。

目先は、原油80ドル、ユーロ1.50の大台に注目。

2009年