豊島逸夫の手帖

Page788 ジムロジャースのFX戦略

2009年12月11日

ジムロジャースという人、実はこれまであまり興味なかった。自分の名前を冠にするファンドがブランドとして販売されるまでになると、コマーシャライズ(商業化)されてポジショントークも絡むだろうと感じていたから。でも、この1カ月ほど米国CNBC看板キャスターのマリア・バルリティロモとの軽妙なやりとりを何回か見て、また読んで(12月4日付け本欄でもビジネスウイーク誌上対談を紹介したよね)、好きになった。年齢的にもギラギラせず肩に全く力が入っていないし、かといって枯れているわけではない。いい味、出してるよ、このひと。

今朝も、例によって米国経済チャンネルつけっぱなしで朝御飯を食べていたのだが、マリアとロジャースがNYSEのフロアーで対談していた。たくわんポリポリしながら、でも、話の面白さにフムフムと引き込まれて、箸を置き、聞き入ってしまった。10分近くも尺はあっただろうか。

開口一番
「ボクは数か月前からドルを買っているけど、分るんだ、きっと損するって。短期売買は苦手なんだよ。ボクが短期にトレードすると、どうもうまくゆかないんだ。でも、なぜドルを短期に買うかといえば、みんながあまりにドルに悲観的だからさ。かくいうボクもドル悲観論者だ。こういうときにドルは反転するもの。」

「でも、ドルも米国経済もやばいよね。FRBも米国財務省も廃止すべきだ!」(おっと、そこまで言うかな...筆者コメント)。

「FRBは膨大なガラクタ資産をかかえ、バランスシートが3倍に膨れ上がり、そのツケは我々に廻ってくるんだ。バーナンキ再任に反対かって?あったりまえだよ。そしてトレジャリーを率いるガイトナー。とても頭の良い人だけど、やっぱりダメだね、辞めてもらわないと。昨日も彼は、もっとカネ使わないといけないみたいなこと繰り返していたけど、そもそも米国が借金しすぎて、カネを使い過ぎて、このザマになってしまったわけじゃない。タイガー・ウッズが、あと5人もガールフレンド増やせば、個人的苦境から脱することができると言ってるようなものだよ。」(もう、話が止まらないという感じ...筆者)

「オバマは、spend the way out of this recession=カネばら撒いて不況脱出、と言うけれど、それやったら次の経済危機、それも近い将来に来ると思うが、そのときに使う弾薬がもう底をつくぜ。ソブリン・リスクの話もそうだ。通貨波乱が来るね、これは。先進国は債務国、アジアが債権者。」

「金?金はもちろん持っているよ。でも、今、金は買っていないよ。随分と上がっちゃったから。上がり過ぎれば、下がるさ。それより通貨を買えばいい。今、ドル買っているけど、ドルのラリーが起きれば、そこで売って、円、スイスフラン、カナダドルなどに乗り換えるさ。」

マリアの質問。「じゃぁ、その国々なら安心??」

「とんでもないよ。心配だよ。それ言ったら、全ての通貨が心配だ。ペーパー・マネーなんだから。ペーパー・マネーを信じられないから、商品におカネ入れているんだ。」(要は、FXはトレーディングで遊び、戦略的には商品ってことを言っているのかな...筆者)

「金については、売りもしないよ。長期では、Gold will certainly go up to a couple of thousand dollars over the next decade=金価格は、これから10年で倍以上になるだろうね。なんといっても中央銀行が売り手から買い手に転じたことがホントに大きな影響あるから。この価格予測が大胆とは思わないよ。」

「それから農産物とか水がいいね。世界的に農業従事者が不足している。マリア君は、ガタガタ言わずに、お百姓さんになることを勧めるよ。そうしなさいよ。(完全に看板キャスターを喰ってる)。それが出来ないのならETFとかインデックスとか、それこそここのNYSEで上場されている投資商品があるじゃない。」

「農業生産者の株はどうかって。株はダメ。NY株は7割も上がっちゃったし。米国におカネは入れたくないし、新興国も上がってしまった。でも、中国やブラジルでバブル懸念というけれど、それはまだ先の話かな。いつかは来るだろうけど。」

「結局、こういうことかな。これから景気が回復すれば、商品への需要は増えるし、デフレに戻れば実物資産の価値が強まるし。でも、だからといって皆が同時に買ったらバブルになる。

すかさず、マリアが切り込んで、「じゃぁ金もバブルじゃないの?」

「Look Maria=いいかい、マリア。ボクは先日300人ほどのファンドマネージャーが参加した機関投資家セミナーで、会場の何人が金を持っているか聞いたんだ。答えをボタンで押す、あのシステムだよ。なんと76%が 金を持っていないし、持ったこともないんだ。76%だよ。」

マリアの、「避けるべき資産はあるか」との質問に。

「米国債。これが次のバブルになるよ。あの米国に30年も金利4-5%でカネ貸すかい?米国債に誰も買い手がいないから、自分で買い取る羽目になっている。」

マリア、「だから個人に国債を売りつけようというわけね。」(なるほど米国でも個人向け国債キャンペーンか...筆者)

「デフレかインフレかって?それはインフレになるさ。コモディティーの供給は足りない。マネーの供給はじゃぶじゃぶ。」

「FRBの利上げの時期かい?バーナンキさんは自分では決められない。マーケットに従うフォローをするしかないだろうね。でも、来年は通貨波乱(currency turmoil)があるよ。波乱があれば買われるのがドル。ドルのショート(空売り)ポジションが一斉に巻き戻され、ドル高になる。そこで他通貨や商品に乗り換えればいいさ。」

マリア、「欧州はどう?」

「英国はダメだね。首相がいかん。なぜソブリン格付けでトリプルAを維持しているのか分らん。ポンドは持っちゃダメ。最後は、やっぱり中国だよね。日本が外国をコピーして(真似て)モノを作り売りまくったように、中国も同じことさ。」

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