豊島逸夫の手帖

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ソブリン・リスク パート2

2009年12月10日

2009年1月22日付け本欄のタイトルが「ソブリン・リスク」。同1月13日付け本欄の見出しは「スペイン国債格下げの可能性」であった。それから11カ月を経て、ふたたびこの言葉「ソブリン・リスク」」が注目されている。きっかけは勿論のこと、ドバイ。

ドバイ・ショックは、経済のシステミック・リスクを誘引するほどのマグニチュードは無いが、あらためてソブリン・リスクの存在を世界の投資家に喚起するキッカケとはなった。ドバイ・ワールドは政府全額出資の企業ということで、投資家は国家が保証しているとの暗黙の了解があると信じていたのだ。その前提が崩れると、これは実質的に国家債務の不履行と看做されてしまう。

神経質になったマーケットは、EU周辺国のソブリン・リスクも心配し始める。ギリシア、スペインなど。だいぶ前に書いた記憶があるが、PIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシア、スペイン)諸国の国債をEUは果たして保証してくれるのだろうか。ハンガリーやラトビアの債務は大丈夫なの?疑い始めるとキリがなくなる。

そこで昨日冒頭に述べたユーロペシミズムが拡大中なわけだ。当面ユーロは売られがちになり、その反対取引としてドルが買われやすい地合いが続きそう。この手のリスクには敏感に反応するはずの金価格だが、投機筋の利益確定の売りに押されてか、今回反応薄である。

なお、興味深いのは ソブリン・リスクという観点から見ると、先進国のほうが、新興国よりヤバく見えること。G20の公的債務のGDP比率は80%ほどで、新興国の倍なのだ。我がジャパンに至っては、同比率が200%近く、堂々の先進国中ナンバーワン。ジャパン・アズ・ナンバーワンの21世紀バージョンがこんな数字とは、トホホだねぇ。

アジア経済危機を教訓に、債務削減に努めてきた新興国。サブプライムの後遺症に依然喘ぐ先進国。エマージングはリスクが高いから、などと軽々しく言えなくなってしまった。新興国からは、あんたに言われたくないよ、と反論されそうである。

さて、昨晩のNY金価格は、一時1140ドル以上に戻したが、午後に入って、アッという間に1120ドルを割り込む局面もあった。地合いは調整モードということを印象づけた格好。当然だよね。

ただし、筆者の常として、連日史上最高値更新の時は引いてしまうが、急落を始めると、日に日に目がギラギラしてくるのだ。

最後に、明日オンエアのCNBC金特番の告知が、日経CNBCホームページに公開されました。

米雇用統計のポジティブサプライズ直後、金価格が急落した時点で収録した番組だが、内容は構造的要因による長期トレンドが中心の構成になっている。

2009年