2009年1月13日
ユーロ ペシミズム(悲観論)が拡大している。本欄1月8日付け"金2000年、ドル200年、そしてユーロ10年"にて引き合いに出したスペインの国債を、S&Pが格下げの可能性示唆。昨晩(12日)の欧米が外為市場のユーロ売りに拍車を掛けた。ユーロ安の直接のきっかけは、依然として比較的高水準にあるECBの政策金利(2.5%)である。FRBの0.00-0.25%、イングランド銀行の1.5%に比し、明らかに割高であるから、引き下げは時間の問題であろう。それを見越した先売りである。
ユーロの不協和音に話しを戻して、筆者がもうひとつ気になる国がドイツ。EU圏内で我が道を行く感じで孤立感が強まっている。ドイツの経常黒字は2790億ドル(GDPに占める割合=7.3%)。本欄2008年12月12日付け"アリとキリギリスの共存経済"にて詳述したところの"アリ組"の代表格である。ゆえに、貯め込んだ分をもっと吐き出さないと(消費しないと)いけないのだが、"堅い"国民性もあり、なかなかおカネを使わない。そこで、財政出動への圧力が日増しに高まっている。しかし、周辺国から見ると、金融危機の共同対応の議論のときにも見られたように、ドイツの"ためらい"が目立つのだ。EU内でダントツの経済力を持つ(EU予算の2割を拠出)ゆえに、"我が国は慈善国家ではない"と言いたくなるのだろう。
そして、ドイツはロシアと大の仲良し。もはや離れられないほどの経済権益が確立されているのだ。今回のウクライナ経由天然ガス供給一時停止の時にも見られたが、EU圏の一致したロシア批判からは距離を置く。さらに、対イランの経済制裁についても、英国、フランス、米国に比し、明らかに腰が引けている。これも既存の交易関係に対する配慮から来ている。同様に、NATO、そしてEUの防衛問題に関しても、例えば、アフガニスタンに4500人の"非戦闘"兵士を派遣するに留まる。サルコジが先頭に立って振る旗には、極めて冷たい視線を送るのだ。
この背景には、ドイツの政治家の世代交代という事情も無視できない。冷戦時代に育った旧世代はEU統合を優先したが、今の新世代はEU統合に対する思い入れが希薄である。EUといっても所詮、外交政策上のツール(道具)としてしか見ない傾向があるのだ。
こうして見ると、今のユーロ安には単なる"金利差要因"以上の構造的問題が内包されていることが分かろう。
外為市場では、再び、ユーロ<ドル<円、という不等式が頭をもたげ、筆者が繰り返し述べているところの"弱さ比べの三つ巴"が繰り広げられている。結果、円が浮上し、海外金は"ドル高"で売られた。円建て金価格はダブルで安くなるケースである。
最後に新著が発売4週間目にして早くも3刷決定となりました。2刷1万部が書店からの引き合いで埋まりつつあるためです。この3連休に2刷分が都心の大型書店には配本されたようで、筆者行きつけの有楽町三省堂とか八重洲ブックセンターにはかなり並んで積まれていました。本の売れ行きというのは、"感度の高い"読者層中心のネット系流通から、次第に、(ギョーカイ用語で言うところの)リアル書店に波及すると聞かされていましたが、教科書通りの展開です。3刷まで行くこと自体に一番驚いているのが他ならぬ筆者ですが、これも時代の流れなのでしょうね。この不況の時代に一冊2000円近くする本だし せいぜい5千部も売れれば、と思っていましたけど、不況ゆえに売れる本もあるのでしょうか...。