2009年4月20日
金融危機の最悪期を脱したか否かも気になるところだが、筆者が最も気になるのは、その後どうなる、ということだ。景気回復のパターンがV字型と考える人は稀である。楽観論でU字型。悲観論でL字型。筆者は、依然W字型、それもWの変形で最後が急回復とはならず、~~~のパターンと覚悟している。
どのような回復度合いにせよ、結局は新興国頼み。今年年初からの株価を見る限りでは期待感が溢れている。株式指数がロシア48%↑、中国39%↑、ブラジル21%↑、インド14%↑。対して、先進国はと見れば、英国(FTSE)11%↑、米国(SP500)7%↑、日経1%↑。直近で見ても、3月から新興国株価指数は27%↑。SP500は21%↑、FTSEは13%↑。あの危機に瀕した東欧の株価でさえ、指数で見ると今年の安値から実に48%も反騰している。
それでもまだバリュエーションとしては割安感がある。PER(株価収益率)が中国株で18(昨年は48にまで買い上げられた後、12まで売り込まれた)。新興国国債と米国債のスプレッドも、7.14%も乖離していたのが5.65%にまで差が縮小した。それだけ新興国のソブリンリスク(債務不履行リスク)が後退したという認識の表れである。一時は売り込まれた新興国通貨も対ドルで戻りトレンドにある。
こうした新興国復活の兆しの背景には、やはり牽引役の中国が未曽有の財政出動に乗り出すこと。G20やIMFが団結して危機に瀕する国々の救済にあたること。新興国はサブプライムウイルスの汚染度が先進国より軽度なこと、などがある。しかし、新興国株式はセンチメントで振れやすいことも事実。期待感が強まれば加速度的に買われるし、悲観に転じると、これまた加速度的に売られる。まぁ、新興国の経済が崩壊するような極端な事態は回避される見通しが強まったが、まだ経済のシステムやインフラが脆弱なだけに、楽観出来る状況とはとても思えない。
結局、China cannot save the world but can save themselves.=中国は世界経済の救世主にはなり得ないが、自国を救済することは出来る。という表現に一番共感を覚える。そこでWの変形に話は戻るのだが、その行く先は世界経済の縮小均衡。要はパイが小さくなるので、その取り合いになる。
金の世界もコモディティー(商品)として見ると、新産金は減り宝飾などの実需も減るなかで需給均衡点が決まる縮小均衡の過程にある。その中でマネーとしての投資需要の増加が際立っている。金融証券業界に金強気派が目立ち、金業界には弱気が目立つのも最近の特徴だ。
さて、週末は福山で個人投資家の皆さん相手に話してきました。今年に入ってからはセミナーで下がる話ばかりして、主催者、聴衆の方々を落胆させてきたので心苦しかったのですが、今回は久しぶりに強気のトーンを強め、弱気をトーンダウンさせて話ができる状況になりました。まだ、こつんと底を売った感覚はないけど、筆者としても900―1000ドルのときよりは、随分と強気を語れます。
それにしても先日の長崎といい、今回の福山といい、地方都市で80人とか100人とかゴールドセミナーに集まる時代になったのですね。以前は、主催者がサクラを入れて、30―50名がやっとだったけれど。さらに、先週の経団連会館での機関投資家ゴールドセミナーでも200名近く集まるようになって、これまたビックリ。それに加え、最近では外資系金融機関からの講演依頼が多いですね。これまた200名近く出席がある。マーケットの地殻変動をヒシヒシと感じる今日この頃です。
聴衆の反応も様変わり。筆者としては十年一日のごとく同じ基礎的な話を繰り返しているのですが、例えば、"金は誰の債務でもない"というくだりで、以前ならば"なんのこっちゃい"という感じで目が泳いでいた投資家の皆さんが、今は食いつくような視線を送ってくる。"金は無価値にならない"という一見あたり前の事実が、やけに身に沁みるご時世になったのですね。