2009年5月1日
事前調整型(pre-arranged)とか緊急手術型(surgical)などと呼ばれた今回のクライスラー破産。ある意味で日本型根回しを周到に行った上での破産なので、エンロンとかワールドコム破綻とは、その影響も大いに異なる。要は、"織り込み済み"ということだ。NY株の場合は、"噂で売ってニュースで買う"というパターンになった。昨晩は、このニュースでGMやフォードの株が買われていることが実に象徴的である。緊急手術型と言われるのは、会社更生のためのリストラ(クライスラーの切り売り)を今後わずか45-65日以内に完了させるという計画だから。
今後の問題は
―株主構成で55%を従業員組合が占める組織がリストラのための切り売りとかコストカットに素直に応じるか。
―仮にも破産した会社の車を本当に消費者が買うか。
そして、クライスラー破産劇はGM破綻のリハーサルかもしれない。GMよりは遥かに規模の小さいクライスラーがテストケースになるわけだ。
さて、4月も終わったところで、NY株を振り返ると4月のSP500は9.4%の上昇で2000年3月以来の上げ幅を記録。3月9日の底から実に31%も急反騰したわけだ。その内訳を見ても、金融セクター23%↑、消費関連19%↑、素材関連15%↑、ハイテク12%↑。
さぁ、そこで、問題は、この上げのモメンタム(勢い)が5月も続くか。米国の経済チャンネルをずっと見ていると、今年もSell in May and go away(5月は売って、はなれよう)という格言が今年も当たるか否かで活発な議論が繰り返されている。今年に限っては違う、という議論もある。英語に問題ない読者のために、その例をここに貼っておく。
http://www.cnbc.com/id/30499356
それに対して、いやいや、3-4月の急反騰が5月も続くと考えるのは楽観的という意見も非常に多い。ここまでのNY株の戻しは売られすぎの反動と、景気底打ち期待(hope)に基づくもの。しかるに、これからは、そのhopeのreal evidence(証拠)が求められる時。5月こそ、show-me time(ショー ミー タイム=本当の姿を見せる時)だと言う。
金融危機の中でfear(恐怖)が支配したマーケットから、徐々に希望の灯が見え始めると、途端にgreed(欲望)が支配するマーケットに変貌するかもしれない。昨日のVIX(通称恐怖指数)は36で、だいぶ下がってきたが、絶対的水準はまだ高い。なお、筆者は引き続きSell in May and go away陣営に組する。
そして、金に関しては、クライスラー破産が織り込み済みで市場の緊張感が緩んだので売られる展開。NY株は"噂で売ってニュースで買われた"が、金のほうは"噂で買ってニュースで売られた"感がある。中国公的保有金増強の報は"鳥の目"で見ると大きな材料だが、"虫の目"で見るとインドの金輸入が1-3月ほぼゼロに続き、4月も通年の半分程度で冴えない。目先は、やはり5月4日のストレステスト、そしてGMの帰趨がNY株、米ドル相場の動きを通じて金に影響を与えるので注目材料だ。なお、カリスマ投資家ジムクレーマーが、金は責任ある(responsible)投資手段と語っている。
また英語だけど↓
http://www.cnbc.com/id/30479929/
こういう人が金をこのように語ることに時代の流れを感じる。