豊島逸夫の手帖

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バッドGM構想パート2

2009年5月27日

3月31日付け本欄で"バッドバンク構想からバッドGM構想へ"と書いてから、60日に近づき、いよいよGM決断の日が目前に迫った。

良いGMと悪いGMに分割する構想は果たしてうまく行くだろうか。良いGMは、キレイなカラダになって数ヵ月後に復活するのか。そして、悪いGMは、不要の工場とかサターンやポンティアックなどの"終わった"ブランドを抱え、群がる債権者と長丁場の事後処理過程に入る。

社債保有者の扱いも焦点で、とくに数万人の個人投資家が抱える6000億円相当の部分が貧乏くじを引きそうな形勢だ。逆にヘッジファンドなどの機関投資家は、CDSで債務不履行リスクをヘッジしているので破産すれば保険がおりるから、破綻歓迎のスタンスである。

現実となれば史上最大の破綻劇となるのだが、昨晩のNY株式市場に悲壮感はなく、消費者信頼感指数好転を材料に上げている。GM関連もこれだけ騒げば材料としては陳腐化するので、織り込み済みというわけか。

金価格も、信用リスク上昇を織り込み、ここまで上げてきた感がある。こちらは、"噂で買って、ニュースで売り"のパターンになるのか。

とはいえ、破綻すれば25万人が失職するわけで、実体経済への影響、とくに肝心の住宅市場の悪化が加速することは避けられまい。"破綻"という言葉には不感症になっても、その本当の意味をマーケットはジワジワと味わうことになりそうだ。

さて、FT(フィナンシャルタイムズ)は、中国がドル・トラップ(米ドルの罠)にはまったという言い回しを使っている。2兆ドルに近い外貨準備の運用を担当するSAFE(外為管理局)が、最近、米国債購入を増やしているというのだ。2兆ドルの7割も米ドルで保有してしまうと、ドル不安で売りたくても売れないという意味のドル・トラップである。直近の3月には、米国債購入を237億ドル増やし、保有残高は過去最高の7680億ドルに達したとのこと。通貨別には、米ドル以外では、ポンド売り、豪ドル買い、ユーロ現状維持、そして金は買いというスタンスのようだ。

それから、今朝の日経朝刊の国際面には、"欧州銀 高リスク証券化商品 なお大量保有 大手三行22兆円追加損失の可能性"の記事。でも、マーケット総合面では、外為市場で"ユーロ 根強い先高観 短期金利上昇が下支え"の見出し。昨日本欄で書いたように、ユーロ経済に悲観的でも外為市場では買われるという状況である。

なお、金市場内部要因としては、NY先物買い残が33.3トン増えて465.3トンへ。金ETFも1353トンから1366トンへ増加してきた。依然、"欧米買い 対 新興国売り"の構図が続く。

2009年