2009年4月8日
昨晩は毎年恒例のGFMS社"金統計年報ゴールドサーベイ2009"の発表があった。その要点を以下にまとめておく。
金価格は2月に1000ドルをつけた後、下落しているが、これでゲームオーバーではない。ふたたび1000ドルを回復するのはeasy=たやすいことであり、年内1100ドル突破もperhaps=たぶんあるだろう。ただし、その上昇はstraight line=一直線ではない。取引の夏枯れとか、インフレ圧力が蓄積するのに時間がかかるので、900ドル以下の水準でshort term=当面は推移しよう。
このインフレ圧力とは、米国政府による財政金融政策(超大型財政出動、そしてFRBによる米国債買い切り)に起因するもので、とくに膨張している米国の公的債務によりドルの信認が問われ、米ドルのrun=取付けさえ潜在的な要因となりうる。金融危機の中でsafe haven asset=逃避資産としての需要も続くであろう。
昨年の金市場の特徴としては、宝飾需要が10%強(250トン)減少。とくにインドがworst=最悪で100トン↓。米国も、本年報発刊(20年前)以来最低で3割近く急減した。唯一、中国だけが健闘している。2009年もとくに金価格1000ドルともなれば宝飾需要の低迷は続く。
対して、投資需要は76%の急増。一般個人投資家も機関投資家も参入を加速。とくに金ETFへの資金流入が貢献している。さらにペーパー型の金投資商品が後退する中で、現物(あるいは現物の裏づけのある)型が伸びていることが対照的だ。象徴的には、金貨が北米、欧州中心に20年ぶりに40%以上急増したことが挙げられる。金地金退蔵需要もアジア中東中心に62%↑。ディレバレッジ傾向の中で短期投資家は撤退。長期現物投資家が急増。投資動機もdefensive=守りの投資で金を購入している。
金鉱山会社によるヘッジ売りの買戻しは360トンを記録したが、年後半にはピークを過ぎ、今年は少量にとどまるであろう。ヘッジ残高も500トン以下に減った。これは金価格の下支え要因のひとつが剥落するという意味で懸念材料と言える。とはいえ、新規のヘッジ売りが出る見込みも限定的である。
新産金は3%↓で12年ぶりの低水準、かつ下落傾向が続く。南ア、インドネシアの落ち込みが目立つ。金生産コストもドルベースで20%近く上昇している。
供給サイドで重要なことは、スクラップなどのリサイクルが27%増加して1200トン以上に達したこと。これは中東、トルコなどで顕著だが、先進国でもdistress selling=在庫処分売りなどが見られる。今年も高値圏でリサイクルは急増しそう。
しかし、この二次的供給源の急増は、中央銀行の金売却の49%↓(246トン)により相殺された。逆に中央銀行による金購入の噂も流れるが、中央銀行自身が直接大量に金を購入することは市場への影響も大きいことから控えられよう。
以上、まとめてみたが、まぁ、本欄の読者にはサプライズは無い内容であろう。リサイクルの数字に改めて注目の必要を感じたが。金価格の見通しは短期弱気、中長期強気ということだね。