2009年12月3日
このサッカーのドリーム・マッチ構想は、ブラジル大統領が、訪問中のイスラエル首相を迎えた席での提案である。中東紛争解決にブラジルも国力に見合った貢献を、という外交的姿勢なのだろう。
かと思えば、今週号の英国エコノミスト誌43ページには、ブラジル大統領とイラン大統領が満面の笑みで握手する写真が大きく載っている。これ、11月26日付本欄「モテモテのブラジルに秋波を送るイラン」に書いたイラン大統領のブラジル訪問の一コマ。ブラジルは国際舞台でも目立ちたがりだが、南米内での数々の紛争も解決できないのに、中東問題に貢献できるはずもないでしょ、というのが同誌の論調。
しかし、イランは、そのブラジルの思惑に乗るかたちで、米国の裏庭=南米に着々と存在感を増している。メキシコ、コロンビア、アルゼンチンはイランに対して冷ややかなので、ブラジルの支持はますます重要な意味を持つ。さらに、イラン支持の国として、お騒がせのチャべス大統領が支配するヴェネズエラとは、「反資本主義車」と名付けた車の生産工場を現地に共同で設立。社会主義的ビジネスモデルで車を自国生産し、ヴェネズエラは車の輸出国になるぞー、とぶち上げた。しかし、実態は相当古いモデルを組み合わせた代物で、販売ネットワークも車購入ローンも無いようだ。
笑ってしまったのは、チャべス大統領が、これまでは「車は資本主義の悪しき象徴」で「車所有は人間の魂に毒である」とまで演説で切り捨てていたこと。このエピソードのオチは、その大演説が終わったあと、彼は高級車に乗って会場を去った。
話はイランに戻って、こちらの大統領は、今、核保有問題で強硬発言を繰り返し、ついにはロシアにも愛想を尽かされてしまったので、かなり焦っている。国内でも選挙操作疑惑とか反対派の台頭に悩む。唯一、原油を買ってくれている中国が、依然、制裁強化には慎重な姿勢を取り続けてくれることぐらい。
そこでイランがこれ以上突っ張ると、いよいよイスラエルのイラン内核施設空爆という軍事的展開が現実味を帯びる。この数週間の欧米の論調を追っていると、Israel's military option=イスラエルの軍事的選択という言葉が目につく。そんなことになれば、原油、そして、とくに金の相場に「火に油を注ぐ」ような影響をもたらすは必至。だから、金を通して世界を見ていると、イラン問題から目が離せないのだ。イスラエル空爆の噂の段階で金を買って、ニュースで売るというプロの常套手段がちらつく。
それから、11月25日付け本欄「インド、中国、米国 三国の思惑」に書いた中国とインドのヤッカミは、中印国境紛争の様相を見せている。ヒマラヤ地域の国境付近にインドが建設中の道路工事に、中国側兵士が妨害行動に出たという報道である。実態はこういうことらしい。インフラが進んでいる中国側の道路は比較的整備され、インフラの遅れているインド側の道路はかなりお粗末な状況。日本でも地方を旅していると、ある県境を過ぎたら急に道路がでこぼこになったというような事がママあるよね。そこでインド政府はメンツにかけても、どぎゃんかせんといかんとばかりに、インド流地方経済振興策の一環で予算を付けたようだ。その現場に中国兵士が介入してくるのは、米国にすり寄っているインドに対するあて付けだと、インド側は感情的に反発する。印米関係が好転してから、中印国境紛争が悪化していると解釈している。
日本がデフレ円高でもたつく間も、世界は動き続ける。日本村は、バイパス道路が出来て、人もカネも来なくなった過疎地域になりつつある。
さて、九州、中国地域の読者の皆さん。
来る12月13日に福岡で人気FPの深野康彦さんとセミナーやります。
彼とはセミナー以外でも、ラジオ日経の彼の番組の「話題の著者登場」コーナーの呼んでいただいたこともあり、気軽な友人のノリで話せます。泣かせたのは、彼がラジオのスタジオに神楽坂で有名な抹茶ムースを差し入れてくれたこと。あの上品な甘さは沁みたなぁ。何を喋ったかは忘れたけど...。
今回の福岡セミナーでは、最後に50分も時間を割いて、二人の「本音トーク」というか「本音バトル」やりますから、乞うご期待。