豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. ドル・キャリー巻き戻し、円キャリー復活
Page786

ドル・キャリー巻き戻し、円キャリー復活

2009年12月9日

ユーロ・ペシミズム(悲観論)が台頭している。ドバイに貸し込んでいる欧州系銀行、ギリシア国債は格下げ、ドイツ経済指標の悪化など、悪材料が相次ぐ。ユーロ売りの反対取引としてドルが買われた。米国経済のほうは雇用統計のポジティブ・サプライズで、EU圏よりはマシという相対的判断が働いている。

こうなると一方的なドル下落とドル超低金利を前提に膨れ上がってきたドル・キャリーにも変化の兆しが見られる。その代わりに円キャリーに再びスポットライトがあたりそうな気配さえ感じられる。いわゆる「LIBOR(銀行間金利)」のドル円金利差は0.1%程度の僅差で上限している現状。ひっくり返ってもおかしくないし、 さらにひっくりかえっても不思議ではない。

そして欧米市場では円に対する弱気論が急速に拡大している。国債発行と税収の逆転は、欧米メディアでもかなり派手に報道された。今朝起きたら、友人のアナリストたちからの、日本の財政規律についての質問とかコメントがずらりパソコン・モニター画面に並んでいた。普天間問題と国債増発の政経両面で、日本に関する見方はペシミズム(悲観論)からbenign neglect (無視して素通り)に変質している。

昨日は格付け機関ムーディーズが米英の国債格付けに警戒警報のようなコメントを出したが、その火の粉は早晩、日本国債格付けにも及ぶであろう。このままでは日本はバイパス道路が敷かれ、過疎化の一途を辿る地域に似た状況になる。

さて、金価格は調整モード入りで1130ドル割れまで下がった。とはいえ、1000ドルから1200ドルへの異常な急騰から見れば、まだ高水準にある。虫の目で見れば、膨張した投機マネー金買いの表層雪崩。魚の目でみれば、金利差で動くドル・キャリーに変化の兆し。鳥の目でみれば、構造要因は変わらず。

2009年