豊島逸夫の手帖

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カリフォルニア ドリーミングからスクリーミング(悲鳴)へ

2009年7月15日

ある年代以上の読者にとって、ママズ&パパズの「カリフォルニアの夢」は、青春の歌だよね。カリフォルニア・ドリーミン♪♪ いろいろな思い出が蘇る。ところが、いまや、カリフォルニア・スクリーミング=screaming(悲鳴)とまで揶揄される州になり果ててしまった。昨日も書きかけた財政危機である。

経済規模は国家であれば世界第8位に相当。失業率は11%。住宅ローンの差し押さえ率は全米で第二位。財政赤字が260億ドル。この金額じたいは、金融危機につぎこまれた公的資金に比し、たいしたことないようだが、ここがこけると他の州、そして連邦政府に波及するので、仮にデフォルト(債務不履行)にでもなれば大問題になることは必至。そんなことはありえないと、たかくくっていたが、どうも雲行きは怪しい。

ある意味では、実質的にデフォルトとも言える。業者に支払うキャッシュがないからIOU(借金証文)を3000億ドルも発行したのだから。それをウエルス・ファーゴとかバンカメは、7月10日までは顧客から提示されれば受け付けるとしていたが、その期限も切れ、州政府の償還期日10月まではタダの紙切れ証文になってしまった。
10月までに州政府がIOUを現金化できなければ、その後の州の支払はキャッシュ・オンリーとなってしまう。カリフォルニア・デフォルトが現実的なシナリオになるのだ。

当然、連邦政府が助け舟を出すことが期待されているわけだが、カリフォルニアに甘い顔を見せれば、後に続く州も黙ってはおるまい。米国における連邦政府の地方自治体救済には大変な抵抗感がある。なんでも最後はお上頼みの日本とは精神的土壌が決定的に異なる。

この問題は米ドルの末路を暗示するようで要注意である。シュワちゃん、頑張って!

それから7月1日付け「金融危機から財政危機へ」に述べた米国の健康保険問題が、いまやワシントンの政局の最大問題となっている。ここでも 背筋が寒くなるような統計がある。Center for Medicare and Medical Aid という処がまとめた数字のエクセルファイルを検索で見つけた。

■米国全体の健康医療関連コスト(兆ドル、兆だからね)

  公的部門+民間部門 公的部門
20001.30.5
20051.90.8
20102.61.2
20153.51.7

健康医療関連だけで、毎年、政府支出が1兆ドル単位でかかるのだよ。金融危機に際しての一過性の公的資本投入と異なり、毎年増えてゆくコストである。それを、富裕層への増税と経費カットで賄うというのがオバマプランなのだが...。

次に、これも昨日書いたゴールドマンサックス(GS)の65%増益。これもさまざまな議論を呼んでいる。いまやGSは銀行であり公的資金投入を受けた身である。それが、投資銀行業務で莫大な利益をあげ、社員の高年俸も復活。彼らの業務を、果たして通常の銀行業務と言えるのか。やっていることはヘッジファンドじゃないの?レバレッジも、さすがに以前の30倍からは減らしたものの、まだ15倍はかかっている。これで、もしまた想定外の出来事で巨額のロスが出れば、GS銀行に公的援助となる。うまくゆけば、高収入。失敗すれば国が助けてくれる。これでは国民が納得しないだろう。

とにかく雇用が改善しないと、カリフォルニアも健康保険も金融機関も復活できない。
雇用改善するまで、米国消費者の財布がもつかな。頼みのクレジットカードも、これまでは溜まったツケの2%を払えばよかったのが、これから5%に増額となるようだ。
月々200ドルの返済が500ドルに急増するわけ。日本と違ってクレジットカードの返済システムが緩くて、借金消費の体質が制度的に組み込まれている。

オバマのアクションが意外に遅いので、米国民にもやや苛立ちが見られ始めたことが気になる。

2009年