豊島逸夫の手帖

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お上からのおいしい話に乗るべきか?

2009年3月24日

もし、あなたが投資家の立場で、お上から、あなたが1万円出資してくれれば 国が6万円出すから、それで不良債権の入札に参加しないか、と言われたらどうする?あなたの損失は最大限1万円。もし、不良債権に良い値がつけば、望外の儲けが転がり込む。悪い話ではないよね。ということでNY株は急騰。

でも、よーく考えてみれば、国が6万円出すということは、そのツケが最終的に納税者に廻ってくるわけだ。昨晩は、この点はとりあえず置いておいて、せっかくお上が良い条件出してくれたから乗ってみようじゃないのという、いかにもノリの良いアメリカ人的な反応で終始した。

しかし、マーケットが冷静になると、納税者のツケの部分が問題視されるのではないかな。まぁ、お上に言わせれば、もし、不良債権に良い値がつけば、その半分は国(=納税者)の勘定に入りますということなのだが。

いずれにせよ、昨晩のマーケットを見るに株式と商品が同時に上がっている(金は下がった)。これは未曽有の規模の財政出動を当て込んだリフレ相場の始まりとも見える。これまでは財政出動しても、金融市場が機能不全状態では、肝臓疾患が回復しない患者にカンフル剤を打つようなものなので、いよいよリフレ相場と言われても、ホイホイと乗る気にはなれなかった。それが昨晩のガイトナーの官民共同買い取り案の提示で希望の灯が見えてきたわけだ。

この案の問題は、上記の点以外にも、国の融資資金が底をつかないかとか、ここまで委縮した投資家が本当にリスクを取る気になるか、などの課題も残る。とはいえ、先日のFRBによる国債3000億ドル買い取り発表とか、マーケットの潮流を変えるような材料が毎週出てくるね。潮が渦巻く鳴門海峡みたいな様相になってきた。この海域を渡り切るのは容易ではない。

金に関して言えば、ガイトナー案が成功すれば金融危機も峠を越し、"質への逃避"で買われていた部分は剥落するだろう。しかし、民間への巨額資金投入による貨幣価値の希薄化のリスクは中期的に残る。

以前にも書いたことだが、金融有事で買われる相場は一過性だが、通貨増発型インフレのような悪性慢性のタチが悪い材料で買われる相場は持続性がある。昨晩のNY株のはしゃぎぶりを冷静に見ていると、血糖値が上がっているのに痛みは感じないから、病状が回復したと大喜びして飲めや歌えやで盛り上がっているパーティーを見る思いだ。(ちなみに筆者は痩せているのにDNAで糖尿病予備軍と診断されているのです。それでも酒は止められても、甘ものがどうしても止められない!今も朝からコンビニで誘惑に負けて買ってしまった山崎パン製の柏もち食べながら、この原稿を書いてます。)

2009年