豊島逸夫の手帖

2009年11月12日

たまにはブログらしく、昨日一日を日記風に振り返ってみることにした。午前中は、地上波民放テレビ局の人気女子アナ相手に最新ジュエリー・ファッション・トレンドについて、ひとくさり。「サブプライム後のジュエリー・デザインのキーワードはconnectivity、つまり人と人の心の繋がり。インナーなモチーフが多く、云々」。参ったのは、メークさんが、なんと眉を細く描いてくれたこと。勘弁してください。（笑）

超柔らかめの話から午後はガラッと切り替わり、グローバル・ペンション・シンポジウムという超硬めの年金基金セミナー。年金運用におけるβ分散というテーマでパネル討論に参加。他のパネリストは、企業年金連合会運用執行理事チーフ・インベストメント・オフィサー濱口大輔氏など４名。

聴衆は９割方、年金基金の人たち。キャッシュフローを生まない金が果たして適格運用資産と言えるか、というような議論。現在の金融システムが孕む本質的リスクに対するヘッジでは。いやいや、ヘッジ機能を発揮するにはマーケットが小さ過ぎる。というような議論の展開。それでもサブプライム後も独り勝ちを続け、連日史上最高値を更新する旬の商品なので、（たぶん参加者たちの個人的興味だと思うのだけど）これまでの機関投資家セミナーにはなかった熱い視線を感じる。

でも会場は冷房で寒く、お台場から六本木ヒルズへの移動が雨の渋滞で時間かかったので昼食抜きとなり、壇上でお腹グウグウ。マイクが、その音を拾うのではないかとヒヤヒヤ。会場に来ていた知り合いを携帯で呼び出し、終了後、ヒルズ・スイーツ探訪。しかし、ランチを３：３０PMに甘いものでは、カラダに良いわけないよねぇ...。でも、筆者には貴重なくつろぎのひととき。

アタフタと帰社したら、エレベーターでばったりと知り合いの会社の人。アッと顔見て　思い出した。そうだ４時にアポ入っていたっけ。ゴメンゴメン。どうも最近、注意力散漫でダブルブッキングをやらかす。この場を借りて、お詫び申し上げます。

５時になるとearly bird＝ロンドンの早起き鳥たちから電話やメールが入り始める。
「最近、ロンドン時間で価格が急騰することが多いね。」
「うん、大手鉱山会社のヘッジ買い戻しさ。」
それから現在関わっているロンドンとＮＹの案件につき、重いファイルが幾つかメールで送られてきていたので目を通す。どうも社内は、なんでも関係者にｃｃしておくという風潮で、それを予め読んでおくのが電話会議でも大前提。プロジェクトチームは３０代半ばが中心だから、オジさんには辛いなぁ。若手はUncle Jeffと呼んでくれるが、会話となると同年代の同僚のノリで遠慮がない。まぁ、そのほうがこっちも気楽でいいけど。

さて、夜１０時になると、ＮＹが活動開始。
「アレッ、今日はVeteran's Day（退役軍人の日）で休日じゃなかったの？」
「いやいや、債券市場以外は、ばっちりオープンだよ。」
せっかく今日はpeaceful（平和な）夜でゆっくり寝られると期待していたのに...。

金価格は、またもや史上最高値更新。１１２０ドル近くまであった。
「先物ネット買い残高も金ＥＴＦ残高も過去最高水準にあるが、直近は爆発的に急増しているわけでもなし。ＯＴＣで大きいのが動いているのかね。」
「ドルキャリートレードでドル安加速と言うが、いずれ巻き戻されるわけで、その時はnot pretty（修羅場）になるのでは？」
「いやいや、今や議論は、中央銀行の金購入というような国際通貨制度問題に直結する現象になっているから、単に投機マネーの悪戯だけでは済まない相場だと思う。」
昼の年金セミナーでも、中央銀行が買いに向かっているという話に、最も強い反応があったことを思い出す。

深夜にＮＹとやり合うと、自然にアドレナリンが出て、直ぐには眠れず。ふとパソコン画面を見れば、マネー誌と経済誌の編集者の方々から、最終校了原稿確認のメール。えーと、２００９年第三四半期の米国貯蓄率は３．４％だっけ３．３％だっけ、等々、細部のチェック。目がしょぼついてきた。

気晴らしに、中村吉右衛門の鬼平をＤＶＤで見る。かっこいいなぁ。「火つけ盗賊改め　長谷川平蔵であーる。神妙にお縄につけぃ！」　思わず、画面に向かって、ハハッーーと呟いてしまった（笑）。

そろそろシーズンも近くなったスキーの雑誌を取りだし、読みながら、イメージトレーニング。スキー板の構造改革で、昔の谷足重心のスタイルから、今は自然体で滑るカービングスキー全盛。昔の知識が邪魔になる。なんか、金市場と同じだな、と感じつつ　ようやくウトウト。米国経済チャンネル付けっぱなしなので、別室の家内には、あなた、よくそんなガンガンさせて寝られるわね、と呆れられつつ就寝。

夢に出てきたのはニセコの羊蹄山とゲレンデ。そういえば今週末は札幌でセミナーだけれど、明日の札幌の天気予報は雪後晴れであった。札幌の知り合いにスキー用具一式預け放しなのに、昨シーズンはついに使うことがなかった、と反省。

今シーズンは絶対、ニセコのスキー＆温泉に行くぞ...。