豊島逸夫の手帖

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中東のバレンタイン

2009年2月27日

今朝は、バレンタインデイーのときに書こうと思っていたが、相場の急変でボツにした話題。

今や、中東の若者の間でバレンタインデイーの愛の告白が浸透し始めているというテレビニュースが流れていた。喫茶店で、はにかみながらハート型のバレンタインギフトを渡すカップルの姿が、実に純情そのものの表情。今の日本には絶滅危惧種の男女だよね...。ところが、サウジアラビアでは"宗教警察隊"が、バレンタインの習慣を厳しく取り締まっているという。彼らは、映画、音楽、そして携帯までチェックするらしい。その一方で、大卒の半分は今や女性。しかし、彼女たちの就職率は10%にも満たないそうだ。そこで、遅まきながら、国王も"民主"改革に乗り出し、今回、初の女性大臣を任命した。肩書は"女性教育担当相"。それでも、当の女性相は、夫の同乗なしに車に乗ることは出来ない。そうでもしないと不倫しかねない、という"道徳規準"なのかね...。

そもそもこの国は"同族経営"が続いている処で、8000人にも及ぶプリンス(王子様)たちから成る一族が、相変わらず牛耳っている。問題は、その国に、世界の原油埋蔵量の20%が眠っているということだ。国内では、依然、ビンラディンの師範代を称する連中が、女性相誕生などを教義にもとる行為と声高に批判している。金の世界で言えば、同国に相当量のIMF未報告の公的金保有が存在することは公然の秘密みたいなものである。さらに、最近は、政府系ファンドをいくつも組成して、コモディティー分野への分散運用も始めた。(著書200ページの"世界を動かす中東マネー"参照)。マーケットにとっても気になる無視できない存在なのだ。

さて、足元のマーケットのほうは円安が進行しているね。90円割れの時、8割以上の外為専門家予想が80円に収斂したことには、日本独自の"サラリーマンディーラー"制度の影響が大きいと感じる。要は右へならえで、仮に予測が外れても"赤信号、皆で渡れば怖くない"の心境なのだ。一番嫌がることが、自分だけ外れるという"醜態"を晒すことだ。メディアも"円高"シナリオを決めつけて、そのようなシナリオに基づいて報道したがる。書店には"ドル円50円時代"のようなタイトルの本が平積みされる。

ドル円相場には潮目が変化の兆しが見られるが、だからといって昨晩欧米市場に流れた"相対的にドルの安全性が浮上"という後講釈もどんなもんかねぇ...。
本欄で先日は"いまやリスクのない安全資産などあり得ない"と書いたが、同じように"いまや安心して長居出来る通貨発券ホスト国など無い"。雨宿りでおカネをパーキングさせるのが、せいぜいのところ。次の草鞋を脱ぐ宿は、まだ見えてこない。当分、外為市場のマネーは流浪の民の生活を続けるのだろう。年初に、"今年はドル安もドル高も明確なトレンドが出にくい年。それほどにドル、ユーロ、円の弱さ比べはいい勝負"と書いたが この三つ巴はゴール直前までもつれそうな様相だ。

ところで、昨日は、初対面の一般メディアの記者さんたちの取材が8件も相次いだ。これも市場の裾野が広がった、ということなのだろうか。経験則から言えば、一般メディアが騒ぎだす時には一相場終わっているのだが...。

なお、"豊島さんは、著書でも、自分で金を買うときは積立と書いておられるが、月々幾ら、どこの会社の積立をやってますか?"と聞かれたのには参ったね。そこまで資産公開せねばならぬ義理も義務もないんだけど、ついつい乗せられて、べらべらと喋ってしまった。後で、まだ脇が甘いなと反省を込めて痛感した次第。

2009年