2009年3月31日
今日は日比谷のペニンシュラホテルに宿泊中。3月下旬は東京ファッションウイークと呼ばれ、色々なファッションショーが集中するのだが、そのジュエリー版が今日午後、ペニンシュラで開催されるのだ。金の世界にいるとファッション感覚も磨かれる。この多面性があるので、エキサイティングで止められませんな。
さて、マーケットはGM破たんの可能性がいよいよ現実の問題となり、先週までのリフレ相場に冷や水を掛けた感じだ。"君たちの会社にカネ貸すところは、もはや国しかない。君たちの提出した再建プランは甘すぎる。今のワグナー会長はクビだ!GMには60日間の最後の猶予期間を与えるから、その間に最後のリストラを実行しなさい。それでダメなら破たん法適用もやむを得ない。クライスラーに関しては30日間にフィアットと提携を決めなさい。"というオバマの最後通牒である。
ウオールストリートジャーナル(WSJ)紙は、GMを良い会社、悪い会社に分割する案も浮上と報じている。good company, bad company構想だが、結果は、no-win(どっちに転んでも勝ち目はない)で、good, badというよりugly=酷くなるだけの様相だ。
今回オバマがちらつかせる破産は、prepackaged bankruptcy=事前調整型と呼ばれ、一度で膿を出し切る大手術を行い、短期の痛みに耐えて、病巣を切り取ろうという作戦だ。ここぞ、筆者がかねてから書いてきた、"エイヤー"の気合でオバマが政治的決断して、"俺がこう決めたから、皆の衆、ついてこい!"と呼びかける正念場なのだと思う。
ただし、GM破たんの影響は、過去のリーマン、エンロン、ワールドコムなどの米大手企業の破たんとは比較にならないほど債権者も多く、その影響も多方面にわたる。そもそも破産した会社の車を消費者が買うだろうか?それほどの全身内臓疾患の合併症がある治療法を真剣に考慮せざるを得ないほどに、実態経済は悪化しているというとでもある。だから先週末までのリフレ相場ムードも吹っ飛んでしまったのだ。
そしてガイトナーが日曜の米国テレビ報道番組に梯子で出演。有名な長寿番組meet the pressでの発言。"金融危機が収束するまでに巨額の援助が必要。自己努力で良くなると考えるのはミステークだ!我々の抱えるリスクは、too much=やり過ぎではなく、too little=やりなさ過ぎだ!"この発言もマーケット心理に冷や水を浴びせた。
さて、筆者は昨年からGM、AIG、そしてUBSに、いずれ運命の時が来ると書いてきたが、残るはUBS。スイスの日経ともいえるNZZ紙は、UBS8000人リストラの報道。さらに筆者が驚いた記事が、"ジュネーブのプライベートバンク幹部が海外出張を拒否"。UBS幹部が米国に於いて富裕層顧客脱税幇助容疑で起訴され、自行の顧客情報開示を迫られている折、同様に世界の富裕層を相手にするスイスのプライベートバンカーたちは、スイスの主権が及ばぬところでは、どこで思わぬ国家権力により拘束されるか分からないという不安に怯えているのだ。東京から横浜へ行く程度の距離感覚のジュネーブからフランス領への入国も拒否していると言う。まさに、スイス金融業界の根幹が揺らいでいるのだね。
そして金価格は、信用リスクが再び高まっているにも関わらず、頭が重い展開だ。週末にIMF金売却報道が再び流れ、ヘッジファンド撤退による運用資産売却処分が株式市場で囁かれるので、買いにくい地合い。本当にGMが破産すれば、ヘッジファンドの破たんも当然出るからね。IMF金売却は織り込み済みに近いけど。
さて、週末は日帰り大阪講演。セゾン投信とコモンズ投信という、澤上さんの薫陶を受けた人たちが立ち上げた独立系投信とのコラボであった。共通言語は"長期保有"。仲介業者は入れず、お小遣いと称する収益分配はせず、解約させて新商品買わせるような短期回転を勧めず、という三原則に強い共感を覚えるので、手弁当で参加した次第。
直販というのは大変で、土曜は大分、日曜は大阪というように各地を巡っての草の根活動を展開しているようだが、こういう動きが広がらないと日本で本当の意味の"株式投資"は根付かないと思う。既存の業界からは改革の芽は出てこないのではないか。というのが、ここのところアウエーのゲームで連戦して、販売第一線を直接見てきた筆者の率直な感想。(東京の半蔵門とか麹町界隈はファンドバレーと呼ばれ、独立系投信の事務所が集中している。大手町、丸の内より家賃は格段に安いけど便利なロケーションだから。)
金にはセンチメンタルバリューがある、という筆者の言葉に彼らも共感してくれて、事実、"子供とか大切な人のために投信を積み立てる"という"30年投資"を説いているそうで、こういう(筆者から見れば)若い人たちにはホント応援したくなります。とにかく株が主役(攻め)で金は脇役(守り)というのがポートフォリオの大原則なのだから、正統派の株式感覚が根付かないことには政府の"貯蓄から投資へ"という掛声も虚しく響くね。