2009年5月28日
今の投資家の気持ちは、これから1週間の旅行に出かけるときの気分に似ている。まず週刊天気予報を見て、セーターも持ってゆこうかなどと身支度を考える。でも、異常気象が続き、1週間の天気を予測しても外れることもしばしば。だから、結局、雨、曇り、晴れ、全ての状況を考え、スーツケースに詰め込まねばならぬ。
資産運用も同じこと。全天候型ポートフォリオの構築が必要である。足元では GMという台風が接近中。その後、来週は晴れそうだが、やがて梅雨の時期に入る。結局、スーツケースには株も債券も外貨も金も詰め込むことになる。晴れれば株、債券が役に立ち、嵐になれば金が頼りになる、というわけだ。金は逃避資産といわれる。急な通り雨に会ったときの雨宿りみたいな位置づけだ。でも、たまたま近くに雨宿りする軒先があるとは限らない。だから、旅行するときに常に折りたたみ傘の携帯が必須になるわけだ。通り雨に会ってから、慌てて傘を売っているコンビニを探しても遅いのだよ。
さて、昨晩のNY株式市場は債券市場の展開、とくに米国債入札結果に釘付けであった。第一報は、入札結果良好。そこで安心感から株が買われるかと思えば、"まだまだ大量発行が続く"との不安感から売られることに。なんだ、結局、当面の入札結果がどっちに転んでも、長期的には心配ということか。Lose-loseのシナリオだ。
10年もの米国債の利回りも、ここにきて3.3%、3.4%、3.5%とじりじり上昇し、ついに昨晩は3.7%にまで急騰。長期金利上昇は当然住宅ローン金利も押し上げるし、折角の景気回復の兆しにも冷や水を浴びせるので株にはマイナス材料。
対して、金市場は、すでに、FRBが米国債を買い取るという量的緩和=通貨増発が懸念されるという見方で買われてきた。つまり、米国債バブル懸念を先取りして買われて950ドルまで上昇した経緯があるので、どちらかといえば冷静に"噂で買ってきたが、ニュースでは売りに回る"という展開だ。ただし、それはあくまで短期的な動きであって、この米国債問題の根は深く、長期的にボディーブローのように効くことは必至。今週火曜日の最後に書いたように、金市場を見るツボは、依然、米国債券市場にある。
GMは、米国政府が株式の7割を保有するという実質国有化の様相。大銀行も大企業も次々に政府の資本管理下に入る時代だ。国には、いくらおカネがあっても足りない。国債発行のニーズは強まるばかり。公的債務の膨張とともに、ドル札の価値は希薄化するばかりだ。
ただし、ユーロも円も"通貨価値の希薄化"という意味ではドルにひけをとらない。いい勝負である。だから、外為市場ではドル価値希薄化が、必ずしも相対価値としてのドル相場下落とはならない。ユーロや円の価値の希薄化の進行がより早いと懸念されれば相対的にドル相場は上がるのだ。ゆえに、外為市場では、相変わらずドル、ユーロ、円の弱さ比べの三つ巴が続く。
なお、金の価値の希薄化が起こるときは、供給量が増えるとき。新産金量は減少傾向だが、1000ドル近くにもなれば二次的供給源=リサイクルは急増することも忘れてはならない。四半期ごとの需給統計を見ても、リサイクルは以下のように増加傾向だ。
2007年第4四半期から。(単位トン)
277→359→277→217→362→558(最後は2009年第1四半期)。
1000ドルになれば明らかに急増することが検証できる。