豊島逸夫の手帖

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Sell in May and go away

2009年4月17日

そろそろ5月の連休が近づくと、毎年本欄で取り上げる"恒例"になった、この相場格言。
昨年5月1日付では、こう書いた。

(以下引用)
5月は株も金も下がることが多いので、Sell in May and go away(5月には売って修羅場から離れよう)と言われる。昨年4月27日にも以下のことを書いた。

日本では連休直前。NYでは5月が気候もベストで外で遊ぶ(go away)には最適の季節。歌手のポールサイモンは、"ニューヨーカーの最大のあこがれの贅沢は5月に休暇とることさ"と言う。

そこでマーケットにはSell in May and go awayという格言が生まれた。こんないい季節にはマーケットから離れて人生楽しもうぜということ。そのせいでもなかろうが、5月は株でも商品でも下がるパターンが多い。
(引用終わり)

これまでのsell in Mayの歴史を見ると、ある年には連休直前に中国首脳が景気懸念発言をしてファンドがコモディティー全般を売り手仕舞いしたこともあれば、別の年にはヘッジファンドの決算期ということで株も金も決算対策売りの波に晒された。さらに5月より先倒しで4月に売られることもあれば、6月にずれこむこともあった。さて、今年は、ということになると、売り材料はいくらでもある。

中国経済は6%台への下落が鮮明。GMの破たんも現実味を帯びる。米国銀行のストレステストも結果発表が5月4日と日本の連休真っただ中という報道も流れている。やばいポジションは手仕舞って、キレイなカラダで連休を迎えるほうがいいかも。反面、リスク耐性のある長期投資家の立場からは、金の場合だが、これからが買い場探しの機会となる。筆者の目も、だいぶギラついてきた。NYの金先物買い残高も先週84.2トン急減して400トンを割ってきた(397.5トン)。ファンド撤退を裏付けるデータである。ファンドが売り切ったところが長期投資家の買いの狙い目となろう。

ひとつの焦点が新興国、とくに中国だが、基本的にまだ財政金融政策の懐が深いところが先進国と違うところ。3年前から筆者がセミナーで使っている譬え話だが、中国経済を高速道路で時速120キロ以上で突っ走っている大型トラックとすれば、それが一般道路に降りたて時速60キロに減速すると、あたかも車が止まっているかの錯覚に陥る。でも速度メーターは60キロを指している。同様に年率12%の経済成長に慣れきった中国の中に身を置くと、6%成長ともなれば、あたかも経済がストップしたかのようなショックがある。セクター別にはバブル破たん現象も起きる。しかし、マクロ的には6%成長で経済が止まるわけではない。さらに、これから大量給油(大型財政投入)して再びインターチェンジから高速道路に戻ろうというところである。

筆者は最近、中国が純金積立を導入するということで指南役として、いろいろ北京の連中と接することが多いのだが、あのトップダウンの国は、力で経済を底上げできる国だということを痛感するね。正月は広州に行ったが、今度の連休は青島(チンタオ)に行く計画である。視察旅行と称して、まぁ、本音は奥の深い中国料理に魅せられたからなのであるが(笑)。チャーハンのようなベーシックな料理を極めると実に奥が深い。シンプルなゆえに素材と料理人の熱の通し方で差が歴然とするのだ。本当のチャーハンは、お米の表面が瞬間的高熱で締まっているが、噛むと実にジューシーなのだよ。もはや日本で炒飯と称する、似て非なるものを食す気になれない。

なんか、つい話題がそれてしまったが、チャーハンのようなベーシックなものへ、サブプライム後はトレンドが回帰しているのだ。とかなんとか、無理やりこじつけの纏めで今日はおしまい。

2009年