豊島逸夫の手帖

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オバマに賭けるバフェット、オバマに不信任投票を投じるインド

2009年11月4日

昨晩のNY株式市場の最大の話題は、バフェット氏による米鉄道大手(バーリントン・ノーザン・サンタフェ)の買収発表。投資総額は3兆円に上り、彼の最大の買収案件となった。

「米国の将来の繁栄は、効率的でよく管理された鉄道システムを持てるかどうかにかかっている」とバフェット氏はコメント。米経済メディアは「オバマノミックスに賭けたバフェット」と評し、recovery portfolio(米国経済回復シナリオに基づくポートフォリオ)と論じる。

一方、インドがIMF売却金403トンのうち200トンを直接場外取引で引き取った事をIMFが発表。これは米ドル主体の外貨準備からの「ドル離れ」を意味し、ドル発券国の大統領オバマへの不信任投票とも解釈できる動きだ。

実に象徴的な動きだと思う。オバマを信じられれば、株は買い。オバマを信じられなければ、金が買い。貴方なら、どっちに賭ける。いやいや、二者択一に限定する必要は全く無い。両方のシナリオを視野に入れて、株も金もポートフォリオとして保有すればリスク分散になるだけの話だ。

そして連休中、金価格があっさり史上最高値を更新して1080ドル台をつけた。インドという伏兵には、それだけのサプライズがあった。IMF売却金の引き取り国として中国、ロシアの名前ばかりが挙っていたが、インドと来たかというのが率直な感じ。

外為市場では足元リスク回避のドル高が進行中。そのドル高をこなして金価格が史上最高値をつけた。米ドルと金のディカプリング現象という、これまでの金史上最高値更新とは異なるマーケットの景色が見られる。外為市場で短期的にドル高に振れても、インドなど外から米国経済を見る目は冷静で、ドル不安を強く感じている。

「ドル安とドル不安は違うよ」と筆者は論じてきたが、ドル、ユーロ、円の相対的評価でクルクル変わる短期的ドル外為相場と、世界の投資家の心の中の深層の底流となったドルに対する不安感とは異次元のものなのだ。

筆者の、金価格目先弱気の大きな根拠の一つがインドの需要激減であったが、民間部門の需要が減っても、公的部門の買いが埋め合わせるシナリオにまでは考えが及ばなかったね。しかもIMF発表によれば、インド準備銀行はすでに10月後半に時価で購入を完了とのこと。ということは1000ドル以上の価格で引き受けたということである。

かくして今週の乱気流の第一波は意外な処から発生したが、今晩は いよいよFOMC。そして金曜日には米雇用統計。そして今月のヘッジファンド決算。まだまだ第二波、第三波が続く。

なお、長期的金価格の見通しについては、新著「小学館30分で分かるシリーズ 3000円から始める金投資」の62ページに詳説した見解と変わっていない。

それから、参考資料として掲載した同25ページの公的機関金保有量の表は以下の通り。


 
金準備高(トン) 外貨準備に占める
金準備の割合
 米国 8,133 78.30%
 ドイツ 3,412 69.50%
 IMF 3,217 -
 イタリア 2,451 66.10%
 フランス 2,450 73.00%
 中国 1,054 1.80%
 スイス 1,040 37.10%
 日本 765 2.10%
 オランダ 612 61.40%
 ロシア 536 4.00%
 ECB 501 18.30%
 台湾 423 3.80%
 ポルトガル 382 90.30%
 インド 357 4.00%
 ベネズエラ 356 36.50%
 英国 310 17.90%

これは09年6月末時点の統計であるが、インドが次の12月末時点では、357トンから557トンに増加して、順位も14位から10位に上昇することになろう。

すでに中国は、今年に入って600トンから1054トンに増加しており、順位も10位から6位に上げている。ロシアも少しずつではあるが金保有量を増やしている。それでも金の割合は欧米に比べれば桁違いに低いのだ。

なお、本欄10月1日付けに書いたことだが、政権交代した日本が金購入を検討するか否か注目されるところ。

2009年