豊島逸夫の手帖

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一円パチンコというディレバレッジ

2009年6月15日

週末は仙台(セミナー)、福島(ゴルフ)と南東北を徘徊していた。小さな地方都市は、今やどこもゴーストタウン化の様相なのだが、例外的に異常な熱気に溢れ、駐車場も満杯のところがある。パチンコ屋である。

とくに最近は一円パチンコというのが流行りだそうな。これまではパチンコ玉一個あたり4円が相場であったが、それを1円に引き下げているという。今の電算化されたパチンコ台は20-30分で1万個勝ったり負けたりが普通であり、4万円程度はアッという間にスッてしまう。不景気のご時世、いかにギャンブル依存症とはいえ、それはきつすぎる。そこで1万円程度なら 許容範囲内ということらしい。これ、典型的なディレバレッジである。グローバルな投資トレンドが南東北のパチンコ業界にまで波及していると見た。

FX業界でも50倍から25倍へ段階的にレバを引き下げる方向で金融庁が動いているという。そもそも個人の外為取引に25倍の倍率をかけることさえ異常である。欧米から見て奇異に見えるからこそ、FTがMrs.Watanabeと書きたてたわけだ。筆者も資産の外貨分散は大賛成だが、それにレバをかければ、単なる博打になってしまう。

昨年、原油が暴騰したのも投機的売買取引に大きなレバがかかっていたからで、ディレバレッジの今年は、原油が上がってきたが、昨年のような暴騰にはならないと思う。金の急騰も本欄5月22日付けに書いたように"静かな"上昇である。これもレバが、昨年ほど大きくかかっていないから。まぁ、市場全般に、さすがに懲りて、まともになって来たんじゃないかな。

足元の金価格は940ドル割れ。NY金先物買い残高が600トン近くまで膨れ上がったことで新雪が重み、表層雪崩を起こしたようなもの。自律的調整である。ここから下値模索が始まり、筆者も目先弱気のスタンスから、徐々に強気ムードになってくる。新雪と根雪の境は900ドル程度かな。(下記の図を参照)。これから徐々に新興国の買いが増えてくるのは必定。

(原油と違って金は通関統計に基づく需給統計が整備されているので新興国の需要も逐次把握出来ることを著書219ページ"金と原油の相関 非相関"の章で詳述した。)

当面、相場の頭を抑える要因が、出口戦略としての利上げ観測、そして、ユーロ悲観論に基づく相対的ドル高。ただ、利上げ観測はフライング気味だし、相対的ドル高というのも持続性に欠ける。

NY株はリーダーシップに欠ける。つまり牽引役のセクターが見当たらない。バリュエーションも割高になってきた。株も原油も金も期待感で買われたが、第二弾ロケットの点火に手間取っている感じ。流入してくるマネーも一円パチンコ状態だから、おとなしい。

その代わり、投機マネーの回転は以前にも増して早く、"待てない"。ゆえに短期的ボラティリティー(価格変動性)は高いが、結局レンジを大きくは放たれない相場がいましばらくは続きそう。

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2009年