豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 緊急原稿 ドバイショックの影響
Page778

緊急原稿 ドバイショックの影響

2009年11月27日

本日、ドバイショックで金が急落しました。その影響を短期的、長期的に弁別して分析してみましょう。

まず、今日のところは、ドバイにexposure(市場の価格変動リスクを直接受ける資産の割合)が多い欧州系銀行の金融不安が連想され、ユーロが売られ、結果としてドル高になりました。

ドルが対ユーロで1.50台から一気に1.48台まで上昇したことが、金の利益確定売りのきっかけです。金市場内部には1200ドル近くまでつけたことで目標達成感もあり、さらに注目されていたオプションの問題も峠を越したことで、囃す材料も出尽くしという感じでした。

一方、長期的にドバイの問題を冷静に見れば、欧州の金融不安再燃が信用リスクを高め、金には買い材料になります。

さらに、ユーロが売られた反対取引でドルが買われているわけで、米国経済の楽観論が強まりドルが買われているわけではありません。相対的評価でドルの方がましというドル高なので、「悪いドル高」と言えます。この悪いドル高のケースは、ドルもユーロも不安、そして円だって円高とはいえ、とても安心できる通貨ではないということで、通貨に対する不信に広がり、金が代替通貨として買われることになります。

ただし、筆者が注目していることはドバイ不安が引き金になってエマージング株式全体が売られ、それがさらにNY株にも波及するシナリオです。こうなるとファンドは分配金原資ねん出のため、株も金も運用資産で売れるものは売ることになります。短期的には株も金も同時に下落することになります。

しかし、下がったところでは、中国、インド、欧米年金そして実需家などの長期投資家が買いを入れるので底は浅いと思います。

ドバイ不安でドル不安が解消されるわけではありません。逆にドルに加え、ユーロまで不安ということになるのです。目先のドルとユーロの弱さ比べにばかり目を奪われていると、木を見て森を見ずということになるでしょう。

2009年