2009年12月8日
歴史上、最初のバブルは16世紀のオランダのチューリップ球根を巡る投機ブームとされる。オットーマン帝国から持ち込まれた彩り華やかなチューリップは、たちまち欧州人の心を捉え、その花はステータス・シンボルとなった。価格も高騰し、人々の射幸心を煽ることになる。やがてチューリップ栽培の最初の段階で球根を先買いする、先物契約の原点のような取引が生まれた。球根価格は、さらに暴騰。
こんなエピソードまで伝えられる。ある船員が球根を玉ねぎと間違え食してしまった。船長は「お前は、この船員全員の一年分の給料に相当する価格の朝食を食べた」と激怒。ついにその船員は逮捕されてしまったという。しかし、価格が永遠に上げ続けるわけもなく、やがて下げ始めるや、アッという間の暴落。多くの個人が時価の10倍でチューリップを買い取る先物契約か、二束三文の球根の現物を抱える結果となったのだ。
このチューリップ・バブルに似たような例が、今、中国で起こりつつある。形もよく似たニンニクである。中国のニンニク・バブルとして英国フィナンシャル・タイムズは一面に報じたほどの話だ。
事の発端は、薬草信仰の厚い中国で、新型インフルにニンニクが効くという噂がネットで広まったこと。多くの学校が給食用のニンニク備蓄に走った。ニンニクの生産はと言えば、中国が世界の3/4を占める。その中心地、山東省では、世界同時不況の煽りで作付けが半減していた。供給が追い付かず、価格はたちまちウナギ登り。
そこに目を付けたのが、大都市で株、不動産投機により大儲けした投機家である。札束を積み、産地でニンニクを買い占め、倉庫に保管。土地転がしならぬニンニク転がしで、倉庫から倉庫へニンニクが転売されるごとに価格はセリ上げられ、ついには末端で10-15倍になっているという。
とにかく、いまだに現金社会の中国では投機用にキャッシュを持っている人間が勝ち。なんせ、銀行のATMが慢性的に支払い用現金不足の状態が続くほどだ。いかにも中国内に溢れる過剰流動性を象徴するような話である。
さて、金価格のほうは、1130ドル台まで瞬間的に下がったが、そこでなんとか下げ止まっているかのような感じ。昨晩のNYでは、バーナンキの講演があり、それが始まった昼ごろから「そろそろ出口戦略について言及ありか」と利上げ警戒モードの中でドル高に転じ、金は急落。しかし、利上げへの示唆がないと分かるや、ドルは再び売られ金は買い直されるという展開であった。いかにマーケットが利上げを意識しているか、象徴的な成り行きであった。
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