豊島逸夫の手帖

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寄り合い世帯の難しさ

2009年6月19日

御用繁多のため、今週は更新間隔が空いてしまった。まぁ、マーケット全体はほとんど意味ある動きも無かったのだけど。株も商品もドルも当面の材料が出尽くして台風の目の中に入ったような状況。今週を振り返ると、米国金融規制改革とBRICs会議開催が主なトピックであった。

FRBに金融規制権限を集中させる改革案は、どうもサマーズがブレインになってまとめ上げた印象があるが、心配なことは、投資家保護の"錦の御旗"の下で規制を強めると、"最後はお上が保護してくれるさ"というモラルハザードが生じることかな。結局、喉元過ぎればリスク意識が薄れ、ふたたびバブルの種を撒く結果になりかねない。グリーンスパンの規制緩和路線が過剰流動性を生んだと言われるが、過度の投資家保護のための規制強化は、結局、投資家を"温室育ち"にしてしまう。"草食性投資家"像とでも言えようか。やっぱり投資には"肉食"的にリスクをも喰らう覚悟が必要なのだよ。

BRICs会議開催についての印象は、米国のヘゲモニーに対する団結とか言われるけど、いざ集まってみればBRICs内での利害相克が露わになってしまったというのが実態。B(ブラジル)は、ロシア(R)、中国(C)、インド(I)の保護主義的輸入規制に不満を持っている。IとCは、Rという天然資源の宝庫を巡って鞘当を繰り返す。C、R、Iは核保有国だが、Bは非保有国で、他の三国とは離れ、地球の裏側に位置する。CとIの国境紛争は依然くすぶり、CとRの国境も昔からの遺恨を引きずっている。

結局、BRICsと言ってもスローガンに過ぎず、同時にエカテリンブルグで開催されたSCO(上海協力機構)のほうが、実体があるということになる。SCOはロシア、中国、中央アジア4か国が米国の単独行動主義に対峙して多極化を目指す共同体らしき存在なのだ。

BRICs会議といえば、米ドルに替わる基軸通貨構想なども常に連想されるが、直ぐに結論が出るはずもなく、マーケットが消化するには大きすぎる材料。IMFにしてもEUにしてもBRICsにしても、寄り合い世帯がまとまるということの難しさを痛感する。

金の世界から見れば、その寄り合い世帯の最大公約数的価値基準ということで金が浮上しているのではないかな。

さて、明日は丸の内で日経プラスワンセミナー。毎年恒例のイベントだが、今年はさほど告知しなかったのに1000名近くの応募があったと、事務局がたまげていた。まぁ、考えてみれば、このフォーラムも当初は第一部:有名評論家講演、第二部:金セミナーという構成でなんとか参加者を募っていたのだけど、今や金というトピックだけで、これほどの応募がある時代になったわけで 感慨深い。プラスワンは土曜別刷りだから夫婦連れが多いのも例年の特徴。筆者としては930ドル台なので1000ドル近くの時のセミナーより強気に語れる。セミナーで弱気論を語ると主催者側も参加者も盛り下がってしまう経験を繰り返してきたから、今回はちょっと気が楽かな。

2009年