豊島逸夫の手帖

  1. TOP
  2. 豊島逸夫の手帖
  3. バックナンバー
  4. 中国で余っているのは売り、足りないのは買い
Page750

中国で余っているのは売り、足りないのは買い

2009年10月8日

これ、筆者の投資の指針の一つである。中国で余っていると言えば、ドル。なんせ外貨準備2兆ドルの7割近くが米ドルと言われる。足りないと言えば、金。世界最大の金生産国なのに金輸入国である。外貨準備2兆ドルの中で金は2%以下。

それ以外にも何かないかと探すと、きれいな空気、まともな飲料水などは、とくに大都市で絶対的に足りない。でもねぇ、だからといって、酸素ボンベとかミネラルウオーター買いためるのもなんだしねぇ。その生産者の株という手はあるかもしれないけど...。まぁ、常々、中国出張の度に、この国で足りないモノはなんだろう、という視点でキョロキョロ周りを見回しているのだ。

さて、ここにきて様々なメディアで金に関する報道がなされているが、昨日のFT (フィナンシャルタイムズ)の記事の要旨を紹介しておこう。

―投資家は金価格が1050ドルを超えても、さらに上昇のモメンタム(勢い)ありと見込んでいる。

―バークレーズ・キャピタルは、2010年にかけて1500ドルを予測。テクニカルには、off the charts=チャートでは測れない未知の領域。利食いとか価格下落に賭けるトレーダーはほとんどいない。

―HSBCのジェームス・スティールは、「売りが現実のものにはなっていない」と表現する。

―バークレーズのジョン・スポールは、誰も「もう充分。さぁ売ろう」とは言わない、と語る。

―ジム・ロジャースは、史上最高値更新という時には敢えて買わない。しかし、価格下落に賭けているわけではない。明日、金価格がどうなるかなど、なんとも言えない。しかし、長期的な見通しを聞かれれば、上げと答える、と言う。

ちなみに ジム・ロジャースは、今朝の米国経済チャンネルにもNY証券取引所のフロアーで生出演。やはり同様の趣旨のコメントを繰り返していた。「歴史的高値の時は買わない。でも、投資家に売れとは言わない。今後10年間、金はさらに上昇する」。筆者も彼の相場感覚に、最も共感を覚える。

なお、今日は極東時間帯で1050ドルを一時突破。昨晩はドルユーロがさほど動かなくでも、なんだかんだと買い口実にして貪欲に買われていた。FTの記事のトーンがヒートアップすればするほど、筆者の気持ちは冷めてゆく。これ、単に、生来ヘソ曲がりという性格的反応というだけでなく、数々の相場の修羅場を通り抜けてきた人間の自然な反応なのだ。

2009年