豊島逸夫の手帖

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ブラジルと中国の接近―連帯を強めるBRICs

2009年5月20日

南米は米国の"庭先"と言われ、貿易でも米国との関係が圧倒的に強かったが、今年1-4月期には、ついに中国がブラジルの最大貿易相手国となった。中国のブラジル産大豆、鉄鉱石輸入は金融危機前の水準に戻っているという。

現在北京訪問中のブラジル首脳は、両国トップが過去1年で8回も会ったと語っている。ブラジルの大統領はコキントウ主席を"my pal"=きさくな友人と呼んでいるほどだ。ヒエラルキー社会の中国で国家主席に"my pal"などとタメグチをきくことは考えられないことだが、そう呼ばれたときの主席の表情を見てみたかった。

両国の中央銀行総裁も、両国間の貿易決済にドル以外の通貨、すなわち自国通貨を使うシステム構築に動いている。その他の懸案事項としては、ブラジル産肉輸入の規制撤廃、両国共同の人工衛星開発の促進などが挙げられている。

この両国関係に限らず、BRICs同志が連帯を強める傾向が最近は頻繁に見られ、とくに金融危機という脅威を共有することで、さらにその連帯感が強まっているように思う。金融危機といえば、経済的影響ばかりに目が行きがちだが、"鳥の目"で見れば、世界の地政学的マップが変わるような外交、政治的影響も無視できまい。

さて、ガラッと話題が変わって、フィナンシャルタイムズの名物コラム"LEX"にJapanese love hotels(日本のラブホテル)という、ちょっとそそられる見出しの記事が出ていたので興味半分に紹介しておこう。

以下要約(意訳)
"LOVEが収益を生まないなどと誰が言ったか?日本のラブホテルは、ウサギ小屋に住む夫婦や不倫カップルの避難先として、事業形態としては稼ぎ頭であった。日本を代表するTOYOTAやSONYが赤字転落するなかで、ラブホだけは例外である。
JLH(ジャパン・レジャー・ホテル)が昨日発表した業績では、昨年顧客数は増加、利益も7%減に止まっている。EDITDAも通常のホテル22%に対して35%を計上。
そもそもラブホテル顧客は数時間のステイなので、客室利用率もグローバルスタンダードでは考えられない250%を達成している。
とはいえ、この業界には脆弱性もある。4兆円産業だが、30,000から35,000のラブホがひしめく細分化された構造だ。国内銀行は貸し渋るし、外国銀行も、一時はラブホ、パチンコ、サラ金に大量に貸し込んだが、いまや一斉撤退モードである。
そうはいっても、このビジネスは死なない。毎日、日本の全人口の2%がラブホを利用し、一回当たりの支出は6500円相当である。これこそ不況に強い産業の代表格であろう。車やテレビよりは、LOVEのほうが安全な投資先に見える。"

だとさ。読者の皆さんはどう思う?筆者があえて言えば、LOVEはたしかに今後のマーケティングのキーワードにはなるだろうね。時代を超える愛情という購買動機。

金の世界だって、純金積立でも金貨でも、自分のためより、愛する人(子供、孫、配偶者、親など)のために、金を長期に貯めるという購入動機が多い。もらうほうだって、国債や株券(もいまや無いが)をもらうより、金貨をもらったほうが、なぜか贈る側の暖かな思いが伝わるもの。これを金のセンチメンタル・バリューと言うのだが、その心理的効果は滅法強い。贈る方でも、自分のためと思えば途端に目がギラギラしてくるが、可愛い子供のためと思えば自然に頬も緩むし、昨日のNY相場が上がった下がったで一喜一憂もしなくなるもの。ひいては、そのココロの余裕は、資産運用全体の判断にも好影響を与えるものなのだ。

それはさておき、社会の流れを見ても、サブプライムという生々しい欲望の嵐が吹きぬけたあとは、トレンドがインナー(内的)なものに回帰してゆくものだよね。今年の米国のファッション・トレンドのキーワードは、connectivity(人間と人間とのつながり)。

日本でも新型インフルの影響で、巣ごもり消費が顕在化し、通販が売れ筋という。突然降って湧いたような感染病という偶然の産物とはいえ、なにかトレンドぽいものも感じるのだ。

2009年