豊島逸夫の手帖

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賭場は繁盛、家計は火の車

2009年11月9日

米国第三四半期GDP、FOMC、そして米国雇用統計と大きなイベントが続いたので、今のマーケットを俯瞰してみよう。

失業率10.2%と、改めて実体経済の悪化を突きつけられると、いかに遅行指標とはいえ、利上げなどとても出来る環境とは思えず、出口戦略は遠のいた感じ。FRBは超金融緩和政策を続行し、実質ゼロ金利は継続。FRBから市中にマネーは大量に供給されたままであるが、そのおカネは(まだ慎重な銀行から)企業の生産活動には廻らず、プロの市場内に留まりリスク資産のほうに流入している。その結果、リスク資産売買の賭場を開帳しているウオール・ストリートはボーナス1兆円に湧くが、実体経済におカネが廻らないから雇用は増えない。メイン・ストリート(街角)の雰囲気は重く、今年のChristmasはThriftmas(節約のクリスマス)となりそう。実体経済を支える企業はリストラとコストカットで決算の数字は良くなったから株価はマァマァ。でも、企業がスリムになり生産性が上がる反面、労働者への賃金支払い(労働分配率)は上がらず。

景気循環の観点から見ると、今は第三段階。第一段階は、財政出動と金融緩和の景気対策。第二段階は、その恩恵で企業が在庫補充および生産性向上のための投資。ここまでは、スイスイとまで行かずとも、とりあえず進行。そして、これから第三段階の雇用増。これは時間がかかる。

この第三段階にマーケットが自信を持てれば、株にも本格的におカネを入れられるのだが。その間、手持無沙汰なので、値動きの良いコモディティーという新設の賭場で、ちょっと遊んでゆこうか。少なくとも 遊んでゆくだけの心の余裕は出来てきた。これがリスクマネー復活という現象なのかな。

幸い、低金利継続観測強まり、ドルには依然先安観強く、賭場の胴元は低金利通貨=ドルをナンボでも融通してくれる。「お客人、コマ札廻すから、遊んで行ってくれねぇ」(どうも筆者は時代小説、読み過ぎかねぇ...)

まぁ、こんなところが、米国GDP、FOMC、そして雇用統計を通して筆者の頭の中で描くマーケットの実像かな。その賭場の中で、ひと際コマ札を積み上げている御仁が、「金」之介旦那。とうとう1100ドルまで来ちゃった。

さて、問題は、目の前にコマ札が積み上がったところで、勝ち逃げできるか否か。金市場は「入るは易し、出るは難し」。大きく勝った人が売り抜ける(つまりこれも出口戦略ですな)のが至難の業。コマ札も換金できなければ、絵に描いた餅に終わる。どうも成り行きで、今月11月は、金にとっての「出口戦略」が問われる月となりそうな形勢だね。あの、金をしこたま買った大手ヘッジファンド=ポールソンだって、どこかで数字を出して分配しないといかんだろうしね。

プロにとって一番難しいのが、実は「損切り」ではなく、「利食い」なのだよ。しかし、金もリスク資産として買われるとの後講釈があるかと思えば、リスク回避資産として買われるという解説もある。貪欲に何でも買い材料にしてしまうようになると、overbought(買い超過)の様相であろう。

さて、今週の筆者の注目は、大型米国債入札。月曜、3年物400億ドル。火曜、10年物250億ドル。水曜日の休日を挟んで、木曜、30年物160億ドル。計810億ドルに達する。先週末、10年物利回りは3.5%台を超えたが、2年物は0.8%台へ低下。イールドカーブ(利回り曲線)が引き続き立ってきた。長期債の消化不良が懸念されている。最近の入札は、なんのかんのと言われながらも、まぁ順調に捌けているのだが、果たして今回は大丈夫か。「悪い金利高」も懸念される。

2009年