豊島逸夫の手帖

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中国金準備75%急増 続報

2009年4月27日

この問題はフィナンシャルタイムズなど、欧米のメディアでは報道されて話題となっているが、"金を通して世界を読む"観点から見れば、中国政府として"いつまでも米国債ばっかりかかえているわけではないぜ"という牽制球である。

そもそも2003年から国内生産金や国内還流金をセッセと貯めこんできたわけだが、今になって何故発表したのか。このタイミングが重要で、米国債バブルの懸念が高まり、世界最大の米国債保有者=中国の動きが注目されるときに、敢えて金準備を増強したことを語る、という点に意味がある。

この問題は"虫の目"で見れば、金市場や外為市場に直ぐに影響を与える要因ではない。2003年から昨年末まで、454トンの金を買い増したということで過去形の話である。しかも、海外市場からの調達ではなく、実際にドルを売って金を買ったわけではない。

しかし、"魚の目"で見れば、今、話題のIMF金売却の予定数量が400トンであることを勘案すると、今後、中国が市場外取引でその400トンを引き取るというような可能性も考えられる。そうなれば金価格にも大きなインパクトがあろう。実際、1990年代にBISが仲介役となって市場外取引の形でまとまった欧州の国の公的保有金を第三国に振り替えた例もある。いわゆるG-G取引(Government-to-Government)=政府間取引である。

更に、"鳥の目"で見れば、やはり2兆ドル近くまで膨張した中国外貨準備のドル以外の通貨への分散を、中国政府が長期的に実行する姿勢であることが読み取れる。

以下は公的金保有ランキングトップ10.(IMF統計2009年3月末時点)

国名 金準備(t) 外貨準備に占める
金準備の割合
 1. 米国 8,133  78.90% 
 2. ドイツ 3,412  71.50% 
 3. IMF 3,217  -
 4. フランス 2,487  72.60% 
 5. イタリア 2,451  66.50% 
 6. スイス 1,040  41.10% 
 7. 日本 765  2.20% 
 8. オランダ 612  61.70% 
 9. 中国 600  2.20% 
 10. ECB 536  23.70% 

同統計が2009年6月末に更新されるときは、中国が1,054トンということでスイスを抜き6位(IMF含む)に躍進することになる。それでも欧米諸国に比べれば中国、日本の金準備比率は異常に低い。その代わりに米国の借金証文を大量に抱えているわけだ。これは誰が見ても おかしな現象。"鳥の目"で見れば、金は世界の西から東、欧州から新興国へ流れる傾向が今後も鮮明になろう。歴史的に見ても カネが集まる国にゴールドも集まるのだよね。

さて、熱心な一定期読者の方から以下の質問あり。
"オバマ、バーナンキ、ガイトナーの秀才コンビを信じられれば金は売り、信じられなければ買いとありましたが、一体、豊島さんは、どちらが確率が高いと思いますか。率直な意見をお聞かせください。"
"一体"という表現に、どっちなんだよ、はっきり書けよ、みたいなニュアンスを感じましたが、筆者のこれまでの論調からしても信じていると思います?そもそも信じていれば、通貨増発によるマネタリーインフレの可能性など言及するはずもないじゃないですか。いかに秀才トリオとはいえ、海図なき航海、出口戦略の見えない政策の舵取りを首尾よくやり遂げることは至難の業だと思います。

2009年