豊島逸夫の手帖

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金需給四季報2009年4-6月期

2009年8月21日

今週WGCが発表した最新金需給統計から要点をまとめてみた。
―総需要は前年同期比で9%↓
―宝飾需要22%↓(前年同期517.8トン→404.1トン)
―投資需要157%↑(162.1トン→417.4トン)

―国別ではインドが38%↓(175.1トン→109.0トン)
2003年以来最大幅の経済成長鈍化(6%前後)、ルピー建て金価格が歴史的高水準を維持、実需家は安値を待つ姿勢、インド国内の投資マネーはこの一年間で銀行預金が22%増。キャッシュポジションを増やし、様子を見るスタンス。宝飾購入者は下取りに出して新商品に買い替える傾向顕著。モンスーンの降雨不足(6月は80年ぶりの干ばつ)。不作、農村部の可処分所得減少。人口の三分の二が農業分野に依存。GDPの18%を占める。4月の祭礼シーズンも売上は7%減(国内金価格が同時期に25%も上昇したため)。インド国内投資需要、は1-3月期に売戻しが新規買いを上回りマイナスとなったが、今期はプラスに戻った。しかし、販売業者の在庫減らしにより、金の輸出が増加。今後については、利益確定売りと業界の在庫減らしが一巡すれば、文化的に金選好度が高い国ゆえ、価格次第では需要が戻ることも考えられる。消費者信頼感指数も、大型財政出動と選挙後の政局安定を好感して改善されそう。

―中国は9%↑(89.9トン→97.6トン)
従って、1-3月期は、金需要で中国が世界一になったが、4-6月期はインドがその座を奪回したカタチだ。しかし、1-6月の半年で見れば、中国が上回る(インドは1-3月期が少なすぎた)。中国に関しては、超大型財政出動と銀行融資奨励による景気浮揚効果の恩恵を受けている。インドのルピー安とは対照的に、人民元が安定的に推移したので国内金価格が為替要因で上がることもなかった。銀行が金現物販売を拡大したことで投資需要も増加基調。金解禁が進行中だ。

―中東は18%↓(87.4トン→71.5トン)

―米国は10%↑(46.0トン→50.6トン)。
内訳は宝飾19%↓、投資 91%↑。消費減退で宝飾は減少し、リスク分散のための投資需要は活発に。

―欧州は607%↑(9.1トン→64.6トン)
投資需要が1-3月期ほどではないにせよ、引き続き急増。欧州圏にはまだ金融不安が残るので、質への逃避が止まらない。

―供給サイドではリサイクル還流が14%↑(276.0トン→334.0トン)
ただし、1-3月期の566トンに比べれば減ってきている。それでも1-6月の半年で900トンに達するので、2007年の一年分(958トン)近くがすでに還流したことになる。今年は記録的なリサイクル量になりそうだ。2008年通年で見ても、新産金が2414トンに対し、リサイクルがその半分の1212トンに達している。もはやリサイクルが金供給の不可欠の部分となった。

―さらに注目すべきは、公的部門の売却がマイナスになったこと。つまり中央銀行の金購入が金売却を上回ったのだ。前年同期69トンの純売却から14トンの純購入に。まぁ、これが続くとは思えないが、一四半期にせよ純購入を記録したことは象徴的と言える。これからは、どの中央銀行が「買う」かということが注目される時代になろう。

以上見てくると。金市場の需給構造が大きく変わっている様が分ると思う。宝飾需要は減少。投資需要は増加。このトレンドはまだ続きそう。供給サイドでは、リサイクルが需給の大きな変化要因(スイングファクター)となり、中央銀行の金大量売却は過去の話となった。

さて、明日(22日)は東京で日経マネー編集部主催の変わったセミナーをやることは既に書きましたが 、9月5日には名古屋でのセミナー、そして9月12日には大阪で日経プラスワンフォーラムに出ます。↓

例年9-11月の週末は休みなしの強硬軍になるので、今年は8月にしっかり体力を温存しました。ブログも更新まばらだったしね。まぁ、8月の相場はまともに見てもしょうがない。原油は70ドル近辺でプロの多くが売りに廻ったところで逆に急騰するし、上海株は急落したり急騰したり。リスクマネーがたしかに戻りつつあるのだけれど、とにかく堪え性が無いというか、おっかなびっくりだから直ぐに手仕舞われる。プロのトレーディングも社内のリスク管理が厳しくなっているので、これまた直ぐに手仕舞われる。運用資産をリスクに晒す時間を最小限に留めたいという傾向が顕著。その結果レンジ内でちょこちょこ上がったり下がったりの繰り返しとなるわけだ。でも、LaborDay(米国の夏の最後の三連休)明けからは本格的な動きになると思うよ。それまで体力温存。

2009年