豊島逸夫の手帖

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世界のFX人気ランキングでは最下位を争う日本円

2009年11月16日

円高だ、超円高になると騒ぐけれど、世界のFXの世界では円と米ドルが人気度最下位を争っている。その事実を証明するグラフが今朝の日経朝刊国際面「データで読む世界経済」のコラムにある。主な通貨の年初来の騰落率の比較である。

主要通貨に対する米ドルの価値を示す名目実効レートは、全体では年初比でマイナス7%。ドルが売られるということは、どこかの通貨が買われるということであり、そこでドル以外の通貨の人気度が計れる。

1位はブラジルレアル、2位は豪ドル、3位は南アランド。いずれも3割前後の上昇率。アジア通貨は、急上昇すると自国製品が売れなくなってしまうので当局が介入して上昇幅を抑えている。それでも韓国ウオンは9%、インドネシアルピーは15%の上昇。そしてユーロは7%上昇。

ユーロ上昇率は一見地味だが、なんせ分母となる絶対取引量がデカイ。逆に資源国通貨は器が小さい。だからボラも大きく、言ってみればプラチナの値動きのようなもの。

そして日本円はと見れば、対ドル相場とほぼパラレルなのだ。ドルと円は金利差要因からみても、LIBOR(銀行間取引短期金利)がドルと円で急接近、逆転とか騒がれるが、3か月ものでドル0.27%、円0.31%。この差って、プロにとっては大変な話なのだけど、冷静に考えれば限りになくゼロに近い水準で低位を競っているにすぎない。

両通貨を構造要因で見れば、欧米市場での日本の不人気度は高まるばかり。筆者も欧米の友人には言われっぱなしである。
「いったいどうする気?政権交代して君たちが選んだ人たちは財政に対する意識が欠落しているとしか思えないよ。95兆円を3兆円削ったって大勢に影響ないでしょ。30兆円削ったってまだ足りないでしょうが。」
「ミスターハトヤマの外交感覚も欠如してるよね。日米合意を平気でひっくり返すけど、外交問題で約束を反故にするということが、日本ひいては日本人の信用度にどれほどの傷を残すか分かっているのかね。この問題に関する予算を、シワケニンとか言われる人たちがTVカメラの前で1時間でぶった斬るというのも、ポピュリズム(大衆に迎合する政策)と言われてもしょうがないぜ。そのツケは結局大衆に廻ってくる。」等々。
挙げ句に「日本株も日本円も日本国債も買えるわけがない。持ってもせいぜいトレーディングの範囲内に留まる。長く持つ気は全く無い。」
ホントに歯に衣着せぬとは、このことか。ここまで言われると、日本人として意地でも反論のひとつも唱えたくなるのだが、残念なかなか説得力ある議論が見つからない。

なんでこんなにウダウダ書いたかと言えば、「円高」と日本人は騒ぐけど、世界基準からみた通貨上昇度はたいしたことないから。今後 も、例えば超円高が進行するほどに日本人気が急上昇するなんて、国際感覚があればとても考えられない。日本国債の大量発行で長期金利が急騰して金利差要因で円が買われるという議論も、「悪い金利上昇」ゆえ、ジャパンのソブリンリスク(債務不履行リスク)が上昇するから、円買いどころか、日本国債格付け引き下げで円売りの材料になってしまう。さらに、米国債だって輪をかけて大量発行されており、長期金利上昇リスクに関しては「負けていない」。短期の政策金利の今後の利上げ発表予想順番にしても、資源国通貨が先鞭を切り、次いでFRB、ECBか。BOJ (日銀)は、最後までもたつくだろうね。

要は、(ここが今日、最も強調したい言葉なのだが)、ドル売りエネルギーの受け皿が多通貨に分散しており、日本円はone of them =一選択肢に過ぎないということ。

週末、札幌でセミナー講演したのだが、質問を書いてもらったら、真っ先に出てきたことが、「円建て金価格はどうなる?」。昔から金価格を見てきた人たちには、80-90年代に円独歩高で円建て金価格が下げ続けた記憶が鮮明に残る。

でも、時代は変わったのだよ。80-90年代は、ドル売りエネルギーの受け皿が、もっぱら円に集中した時代。ドイツマルクもあったけどね。

でも、ユーロが登場して、有力なドル売りエネルギーの受け皿が誕生した。ドル建て金価格と円建て金価格を比較しても、ユーロ誕生前の「乖離の時代」と、ユーロ誕生後の「パラレルの時代」とで、はっきり異なるパターンになっている。

円高の分だけ円建て金価格上昇が相殺されることは間違いないが、年初来からの値上がり率を比較しても
ドル建て     853ドル → 1114ドル  30%↑
円建て(小売) 2728円  → 3387円   24%↑
要は、ドル建て金価格のボラ(価格変動率)の方が、はるかに効いているのだよ。

ちなみに冒頭に紹介した通貨別騰落ランキング見ると、各通貨建て金価格の比較も連想され興味深い。ユーロ建てでは円建て以上に上昇が抑えられているということだね。それでもユーロの対ドル上昇率が7%ということはドル建て金価格上昇率のほうが遥かに大きい。日々のマーケット感覚でも、ドルユーロは1.50の水準をなかなか抜けないが、国際金価格は、お構いなしで上がっている。そして、資源国通貨建てにすれば、現地金価格はほとんど上がっていない。

それから、主要金需要国の話だが、インドのルピー建てでは上がっているのでインドの需要は減っているけど、人民元の実質ドルペッグ状態が続いた中国の需要は堅調である。ということは、もし伝えられるように、人民元高が容認されれば中国の金需要にも陰りが見え始めるということか。同じ金価格でも、各国通貨建てでみると、景色がかなり違ってくるのだ。

さて、札幌には金曜夜に入り、その後3食、全部、寿司三昧でした。なんせ回転寿司のレベルが高い!特にタチ(たらの白子)の新鮮でクリーミーで美味なこと。東京ではまず味わえないもの。タチだけで全部で6カンはたいらげたでしょうか。イクラも北海道のを食べると、後で東京では、とても食べられない。似て非なるもの、という感じ。

新千歳往復の飛行機の異常な混み方にも仰天。全便土曜満席はまだ分かるけど、金曜も全便満席。その理由が、帰り際、札幌駅にて地下鉄改札口からJR駅に向かう道で分かりました。長蛇の列。それも全員女性。札幌ドームで嵐のコンサートに全国から大集合していたのです。あの女性消費パワーは凄い!そういえば回転寿司屋さんでも嵐ファンと思われる母娘連れが目立ったなぁ。

そして行きの便では、羽田の滑走路の目の前を大統領専用機が着陸。おかげで数十分、滑走路上で待機。帰りの便は関東地方の突風で1時間遅れ。結局上海1泊出張と変わらない感じになりましたが、満足感、否、満腹感イッパイの出張でありました。

帰宅後の土曜夜は、「よーし、これで明日昼まで邪魔されずに爆睡できるぞー」と思った途端に、嬉しくて、嬉しくて、興奮して眠れず(笑) でも、その程度の事でと思うと、なにか寂しい...。

てなことを朝から書いていたら、仕事とは全く無関係で日経もまず読んでいないであろう友人からメール。「金、上がってるらしいねぇ」。
聞けば、今朝の朝日新聞に金上昇についての解説記事があり、そこで筆者のコメントが引用されているそうな。そうか、普通の新聞読者にしてみれば、金高騰のニュースなどめったに触れる機会が無いのだよね。そういえば札幌から新千歳に向かう列車の電光ニュース(北海道新聞提供)で、NY金最高値更新、と流れていたっけ。

プロの感覚から言えば、ここまで浸透して、大方の見方が同方向(=上げ)で一致すると、そろそろ一相場終わりなのだけど...。

さて、このブログ更新を送ろうと、ふとモニター画面見れば、あらあら、1124ドルつけてる。今週も米国小売統計とか物価統計とか、気になる材料目白押し。おそらく金市場は、なんでも貪欲に買い材料に仕立てるのだろうけど、どうも気持ちが悪くてしょうがない。高所恐怖症のケはないのだけど、高山病にかかったのかしら...。

2009年