2009年4月23日
深夜のNYロンドンとの電話会議の中で、上海モーターショーが話題に。"中国が車販売世界一になったといっても、ミニバンではマージンもミニだよね"。確かにその通り。映像に出てくる車種は小ぶりのものばかり。北京のスタッフの連中と話していても、やはり 社会のセーフティーネット(年金、医療保険など)が整備されないと、安心して本格消費に向かえず、結局貯蓄性向が高いまま、ということを痛感する。結局ここでも"縮小均衡に向かう世界経済"ということか。
話題は米国へ。ファニーメイのCFO(会計責任者)が自殺というニュース。80万ドルのボーナス支給をめぐりSECの調査を受けていた矢先とのこと。"あんな幸福そうでいい家庭のご主人が..."と涙声で語る隣人。こういうことって、米国も日本も同じだね。これからは、銀行マンも、やみくもな銀行叩きにあっても、それに耐えられるか否かの"ストレステスト"が必要?
1. | AIG | 700億ドル(約7兆円) |
2. | バンカメ | 525 |
3. | シティー | 500 |
4. | フレディーマック | 446 |
5. | JPモルガンチェース | 250 |
6. | ウエルスファーゴ | 250 |
7. | ファニーメイ | 152 |
8. | GM | 143 |
9. | ゴールドマンサックス | 100 |
10. | モルガンスタンレー | 100 |
こう比較すると、金融機関への資金投入に比べればGMなどカワイイものという錯覚に陥ってしまう。この感覚が怖い。そして、9位、10位の金融機関から早期返済を申し出ていることも理解できる。
さて、先週から機関投資家向けセミナーが4件続いた。一口に機関投資家といっても、ジホー(事業法人)、キンポー(金融法人)、そしてbuy side(年金などの所謂顧客筋)とsell side(販売業者)に分かれて、それぞれの立場は異なる。
昨日は株式アナリストが多かった感じ。さすが、良く勉強している。金鉱山会社の新規ヘッジが出ると思うかという質問は、金鉱山会社関連のアナリストミーティングで真っ先に出る質問でもある。ヘッジ残高が500トンを割り込むと、市場の関心は"ヘッジの買戻し"から"新規ヘッジの可能性"に移る。しかし、その兆しは、ほとんど見えない。"ヘッジ売りなどと余計なことをしてくれたせいで、金鉱株を買っても、金価格上昇による得べかりし利益を享受しそこなった"という株主の恨みツラミが身に沁みている金鉱山のCEOたちにとって、ヘッジという言葉はいまやdirty word=忌み言葉である。
もう一つの質問は、"FRBが出口戦略をあやまつと金価格が上がるというけど、金利が急騰して金には逆風になるのでは?"たしかに米国債の利回り=長期金利が急騰するが、FRBによる米国債買い切り=通貨増発により名目価格水準も急上昇すると、実質金利は下落する。1979年から1980年にかけ、当時の金価格が史上最高値をつけたとき、ドル長期金利は8%から12%へ急上昇したが、実質金利はゼロに下がった(卸売物価ベースでは、-4%にまで下落した)。それだけ名目価格水準が上昇したということなのだ。
このことを団塊の世代は苦い経験として覚えているのだが、若い人たちには70年代の経験といってもピンとこない。
インフレの話題になると、70年代を経験したかしないかで反応が全く異なる。この前、若い記者氏から、"その頃、私は生まれていませんでした"と言われてハッとしたことがある。それが40歳くらいの世代になると、"母親がスーパー行ってトイレットペーパー買い溜めるのを手伝わされた"というような記憶が残っていることもある。でも、まだまだ子供の頃のことゆえ、なぜそんなに大騒ぎするのかと感じたという。
ガイトナー財務長官は40代。その彼が、昨晩、こんな発言をしていた。
"経済に対するブレーキの踏み方=step on the brakeを間違えないようにしたい。"
そう、ブレーキを踏みすぎればデフレ(さらに昂じればデフレスパイラル=破綻、信用リスク↑)に、踏むタイミングが後手にまわるとインフレに。マクロ経済の運転技術は実に難しいものだ。オバマ、バーナンキ、ガイトナーの秀才トリオの操縦技術を信じられれば金は売り。信じられなければ金は買い、ということだろう。