2009年8月26日
S&Pケースシラー住宅価格指数が2か月連続して上昇してNY株式市場は好感。でも胴元のS&Pとインデックスの生みの親シラー氏の見方は冷めている。
S&Pブリツァー氏のコメント:
1981-1982年にFRBが利上げしたとき、住宅価格は急落した。今回もFRBが出口戦略に動いたときに、引き締め転換のタイミングが早すぎると 同様の結果を招く。
シラー氏のコメント:
ターニングポイント(転換点)を示唆するが底打ちとは言っていない。つい一年前にも下落率が減少して市場で好感されたが、結局市場は崩落してしまった。我々のモデルでは、今後5年間の住宅価格は今より6%増。これでは本格的回復とは云えない。
結局、住宅市場も生命維持装置で何とか持ちこたえているのだよね。それは、
◎一軒目の新規住宅購入者に8000ドルの税制優遇措置(この点滴は11月で切れる予定だが、果たして点滴を外せるか...)
◎4-6月期に発動された差し押さえ停止措置 など。
とにかくケースシラー指数も前年同期では依然15.1%減なのだ。都合の良いデータの解釈には注意したいもの。今朝のTVワイドショーなど日本のメディアは米国住宅市場底打ちと囃すが、米国経済チャンネルは上記のような冷めた見方を報じる。
次に、バーナンキ再任。これは素直に好感できる。一時は対抗馬と目されたローレンス・サマーズは、ややクセあり。ハーバードに戻ったほうがいいかも。ただし、バーナンキが真価を問われるのは、これから。シャンペンを空けてドル札を振舞ってくれれば、ウオール街は悪い気はしない。でも、それが、「のりピー」みたいに依存症になると、「出口戦略」という名の禁酒道場にマーケットが入れられたときに、禁断症状が出るは必至。結局、今の株高は、薬物による精神的高揚でハイになっていたのだと後で思い知らされることになろう。ドル札を振舞うのはやさしい。でも、振舞ったドル札を取り上げるのは、誰がやっても難しい。たとえバーナンキでも恨まれ役になろう。その時の彼の評価がどうなるか見もの。あのグリーンスパンも、ドル札シャンペンを振舞った在任中は神格化されたが、その後遺症としてサブプライムが生じるや一転して評価が下がったではないか。
ちなみに、「金価格は中央銀行にとって通信簿みたいなもの」とスピーチで語った日銀高官がいたが、バーナンキの評価が高ければ金は売りということになろうか。節度ある金融政策の下で、インフレのリスクは低くなるわけだから。(なお、グリーンスパンの評価が下がると金は上がったね。)
最後に今朝の日経朝刊で一番気になった記事が国際面の「米財政赤字 今後10年 累計850兆円 3割増に増額修正」。医療改革だけでも1兆ドルかかるわけで、金食い虫のベビーブーマー世代がリタイアして、いよいよ財政を蝕むわけだよね。台所を預かるバーナンキ、ガイトナー、オバマのトリオは、ホントにどうやりくりつけるのかね。
増税か、ばら撒き撤回か。どちらも国民に痛みを強いる経済政策で、オバマもいよいよ国民に耳の痛い話をせねばならぬ時が来た。オバマと国民のハネムーンが終わって、早くも夫婦の危機になりかねない。離婚を避けたければ、マネー供給のバルブを締めるわけにはゆくまい。
本欄ではすでに述べたことだが、今年の秋相場のテーマは「金融危機から財政危機へ」である。
(追伸)
最近、新幹線に乗るたびに、ひっかかることがある。グリーン車は悠々自適でフルムーン旅行を楽しむシニア夫婦でいっぱい。そして自由席はと見れば、働き盛りのサラリーマン出張族で満席。コンビニ弁当食べながら、汗拭き拭き携帯パソコンを叩いている。この光景を見るたびに、これではこの国は滅びるなと思ってしまうのだ。