豊島逸夫の手帖

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朝食は洋食より和食のほうが安上がり?

2009年10月28日

コメ、小麦、大豆、トウモロコシなど穀物の海外相場が急落し、洋朝食系の嗜好品である珈琲、紅茶、ココア、オレンジジュース、砂糖の相場は急騰しているそうである。紅茶は史上最高値、ココアは30年ぶりの高値、砂糖は28年ぶり、珈琲は11年ぶりなどの高値圏だという。

FT(フィナンシャル・タイムズ)紙によれば、今年に入ってからの価格上昇率も砂糖86%、紅茶70%、オレンジジュース60%、アラビカ珈琲30%、そしてココア28%に達する。朝食は和食系か、洋食でもノンカフェインでシリアルなど健康に良いメニューに限定したほうがコストも安く上がりそう。

その背景を見ると、需給構造に根本的違いがある。穀物系の生産地は米国、カナダ、EUそして豪など先進国に集中しており、相場高に生産者が敏感に反応して作付け面積を増やすなど増産する。対して、洋朝食系の生産地は、発展途上国、とくに熱帯に集中する傾向があり、天候、紛争の影響をモロに受けやすい。生産国も少数の国に集中するので供給サイドの要因がより強く価格変動に反映される。

例えば、ココア生産の6割は象牙海岸、ガーナに集中している。品目別に見ると紅茶は主生産地インド、スリランカ、ケニヤがほぼ同時に干ばつに見舞われたこと。ココアは象牙海岸の天候は順調なのだが、ココアの木の老木化により収穫が減っているという。砂糖はエルニーニョによる異常気象で、インドは1972年以来という少雨、ブラジルは乾季に多雨に見舞われているための高値。オレンジジュースも、やはり異常気象でブラジル、フロリダの低温とミドリ病という病気が原因という。

話は代わって、今、朝食を食べつつ、本稿を書いているが、筆者にとっては朝食と言えば納豆が必需品。その納豆業界は、今、厳しい状況にあるそうだ。その理由は、消費者の節約志向。読者の皆さんも経験あると思うが、スーパーで納豆4パックとかまとめて買って冷蔵庫に保管し、結局、いくつか残して賞味期限過ぎ捨ててしまうことが多かった。それが最近は変わってきて、きっちり消費されるのだという。なんか、説得力あるよね。

またまた、話は飛んで(よく飛ぶねぇ)、紅茶のスリランカで思い出したけど(だんだん記憶が斑模様になってきた...?)、大手ヘッジファンドの創設者でスリランカ出身のRajaratnam(ラジャラトナムと読むのかな)という人間がインサイダーで検挙され、なんと100億円の保釈金で保釈されているという話。アナリスト出身なので、同ヘッジファンドの手法もアナリストを多数雇い(従業員150名)、標的の会社を徹底的に調べ上げる。内部人脈にもアクセスして内部情報を掴み、それを利用して売買したという容疑。

NY証券取引所から、売買状況がちょっと怪しいという情報を受け、SEC(米証券取引委員会)が動き、FBIがなんと2年間にわたり携帯電話を盗聴して容疑を固めたという。「こんなことがバレたら、私のキャリアはお終いよ!」と叫ぶ女性容疑者の声まで録音されている。

とくにこのインサイダーが大きな話題になっているのは、容疑者にIBM、インテル、そしてマッキンゼイ(大手コンサルタント会社)で要職に就いていた人物が含まれていること。マッキンゼイのディレクターは拘束された直後、ショックで失神したという。

Rajaratnamは逮捕直前に海外に逃亡するところだった。ただし、故郷のスリランカでは過激派に資金供与を行ったという疑いで拉致、暗殺の危険があり、スイスに向かう準備を進めていたらしい。ヘッジファンド業界にとっては、やっと金融危機禍から抜け出したかという矢先の不祥事ゆえ、イメージダウンを危惧する関係者が多い。

なお、彼は逮捕後、同ファンドを解散して3000億円以上相当の全額を投資家に返還するそうである。これまでスキャンダルに見舞われたファンドは、あくまで無罪を主張してカネを返さなかった例が多いので、彼の身に引き方はウオール街で称賛されているというのも、どんなもんかねぇ...。

2009年