豊島逸夫の手帖

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金も米国債も買う国々

2009年11月10日

昨晩の米国債3年物400億ドルの入札は、外国中央銀行などから記録的な買いが入り好調に終わった。あくまで3年物という短期債なので、今日の10年物の結果を見ないと結論は出せないが、とにかく米国債に群がる中央銀行が多いことはたしかだろう。

米ドルは不安だとこぼしながらも、結局、米国債に頼らざるを得ない中央銀行。彼らにとって、米国債市場の最大の魅力は、その流動性の豊かさであろう。池の中の魚に譬えれば、水量が豊かなほど安心で、渇水が一番困る。干上がった池の怖さをサブプライムの流動性危機では思い切り味あわされた。

そのような状況下で金も買う中央銀行が増えているのは、せめて米国経済への不信認の意思表示だけはしておきたい、ということか。あるいは巨額の増発が続く米国債のバブルを懸念し、それに対するヘッジとしての金購入といえるかもしれない。

今年に入っての主な公的金保有の増加をまとめた。
中 国  600トン → 1054トン
インド  357トン → 557トン
ロシア  495トン → 568トン

ただし、中央銀行が民間金市場でまとめて数十トンとか数百トンを購入するという事は至難の業である。中国とロシアは自国産金を買い取る形で公的金保有を増やしているし、インドはIMF金売却という特別なケースを利用して、場外取引で買い取っている。いずれも特殊な売買形態といえる。

今後、本当に彼らが公的金購入を続けるのであれば、いずれ民間市場に直接打って出ねばならぬ。振り返れば、90年代に彼らが民間市場に直接打って出て、毎年500トンとか600トンの金を売却した時のショックを思い出せば、今回、もし彼らが、その逆、つまり買いをやったら、その価格に対する影響は甚大なものがあろう。本番はこれからである。

さて、タイミング良く東京でセミナー講演します。11月28日、日経ホールで日経プラスワン・セミナーです。

先月の有楽町国際フォーラムでのセミナーは、会場のキャパが200人しかなかったので、結果的に400名以上の方々が抽選に外れてしまいましたが、今回はキャパが500名あるから大丈夫でしょう。昨晩も日経CNBCの夜エクスプレスに生出演しましたが、尺が7分では(これでもテレビでは長いほうですけどね) とても語りきれません。やっぱりセミナーで80分じっくり聞いていただきたいと思います。

2009年