豊島逸夫の手帖

Page791 利上げせず、と断定!

2009年12月16日

日本時間明日朝発表のFOMC声明を巡り、FRBが利上げを仄めかすような行間のニュアンスを入れ込むのでは、との観測も浮上している。筆者は、振れの大きい雇用統計が予想外の良い数字で出たからといって、即、利上げのタイミングが早まるとは思わない。ただ、ひとつ言えることは、今後予想される日米欧の利上げサイクルの先鞭をつけるのは米国であろう、ということ。それに欧(ECB)が続き、最後の最後に日銀という順番となろう。

デフレに喘ぐ日本に利上げなど、先の先の話というのは全くその通りであるが、長期的に見れば、今の超低金利政策がずっと続くはずもない。でも、街中では、続いて欲しいと願う人達と、当面続きますよと断言する人たちの会話が聞かれる。その場所は、マンション販売用のモデルルーム。新規マンション購入希望者とセールスマンの対話だ。

「お客さん、こんなに景気が悪いのだから、日銀は当面金利を上げるようなことはしませんよ。しばらくは変動金利を利用すればいかがですか」

住宅ローンに詳しい(筆者は詳しくない)深田晶恵さん(筆者が20年近くも親しくしているFP集団クル―の売れっ子FP)によれば、変動と固定の差はこうなる。

4000万円を変動金利型ローン、35年返済。金利0.975%で借りると、毎月の返済は11万2448円。これなら年収600-700万円の人も、「買える」と思ってしまう。
同じ4000万円をフラット35など長期固定金利3%、35年返済で借りると、返済額は毎月15万3940円。
10年固定金利2.4%を利用しても、月14万863円。

そこで、変動なら買えそうだけど、固定金利にすると返済が厳しいという購入者に対して、先のようなセールストークで説得がされるという。数々の住宅ローンの相談を受ける深田さんに言わせれば、
「私のもとへ相談に来る人は口を揃えて、日銀は金利を上げない、と言われたという。営業マンが言うことはローンも含め専門家としてのアドバイスと受け止める人が少なくない。あるいはプロが言うのだから、当面金利は上がらないのだな、と思いたいのかもしれない。」

でも、FOMC声明と全く同じで、「当面」という言葉の意味もあいまい。ゼロ金利という有事対応がいつまでも続くはずもない。いつかは来る利上げの時には、ローン変動金利も上がる。その時点で、今の年収600-700万円の購入者の家計はどうなっていることか。

なお、銀行や証券会社の窓口の人が、投資信託や株式を売る際に景気や金利動向について断言すると金融商品取引法に抵触するが、住宅ローンは消費者保護の法律が存在しないため、不動産の現場はまさに無法地帯なのだそうだ。

「早急に消費者保護の仕組み作りが必要」と彼女は訴える。

この話を聞いたとき、筆者は米国サブプライムの発端になった変動金利住宅ローンを思い出してしまった。「金を通して世界を読む」237ページ、「グリーンスパンの懺悔」にも書いた彼の議会証言。

2004年
「FRBの最近の調査によれば、多くのマイホーム所有者が、過去10年間に固定金利の代わりに変動金利でローンを組んでいたら、数万ドル単位で資金を節約できたはずである。」

2008年
「私の変動金利ローンについての見解は間違っていた。実は私が個人的にローンを組んだときも、変動金利ではリスクが大きいと感じた。30年固定金利が最も重要だと思う。」

なお、今日引用したことは、毎週土曜日発行の「クル―レポート」に深田晶恵さんが書いた「0.975%の変動金利が生む弊害」によります。

共同事務所が中野の鍋屋横丁にあるので、筆者は勝手に中野グループと呼んでいます。他にも、野田眞、亀井幸一郎、目黒政明、浅田里花、内藤真弓、清水香さんなど(年齢などは無関係の順不動だよ 笑)、メディアではお馴染みの名前が並びます。

なお、「金を通して世界を読む」の韓国語版が、ランダムハウス・コリアから出版されました。日本語だと238ページの本が、韓国語では284ページでサイズも一回り大きくなり、こっちのほうが立派に見えるほど。ハングル文字ばかりで判読できませんが、筆者の名前(漢字)と英語のタイトルGold Economicsだけ読めました。さらに、中国語でも試訳されているそうです。著者としてはアジアに広がり素直に嬉しいこと。

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