2009年12月21日
2008年は金融危機の年。2009年は未曾有の財政出動、超金融緩和の年。2010年は有事対応からの出口戦略の年。
以下は、本欄2009年9月15日「リーマンショックから1年 - ネット上でプレゼンテーション」の再録、およびアップデート(イタリック体の赤字で加筆)。
1.財政出動のステロイド効果依存症
金融危機に端を発する世界同時不況脱出のために各国は未曾有の景気刺激策を実施。
問題は、その超大型財政支出のステロイド効果が切れたとき、のりピー型依存症から自律的に脱却できるのか、ということです。
2.雇用なき回復
米国の企業業績は改善傾向が見られますが、リストラやコストカットの効果に依存しているので肝心の雇用は増えず、牽引役の個人消費も低迷が続きます。
足元では米国雇用統計に改善の兆しが見られます。しかし、クリスマス商戦の出足は鈍いようです。
3.W字型(二番底を見た後も低迷状態が続く)
リーマンショックから一年の現在、景気も株価も変形W字型の真ん中の山を越えつつある過程です。NY株もここまで期待感だけで反騰しましたが、その証しが見えず、息切れの様相。
この状況は未だに変わっていません。
4.縮小均衡へ
結局、景気も株価も膨張していたリーマンショック前の水準には戻りません。最悪期は脱したが、悪化の進行が鈍化の域を出ず。経済全体のパイは大きくならず、縮小均衡と云えます。
5.グラフ - 激増する米国通貨供給
さらに、金融安定化のためにFRBは巨額のマネーを市中に供給しました。問題は、この有事対応から、どのように平時に戻すかということです。出口戦略が市場の課題になりつつあります。
この問題が、正に、2010年の最大のポイントになりましたね。
6.リスクが民から官に集中
この大量の通貨供給の過程で、FRBは巨額の米国債やサブプライム関連債券を買い取りました。民間のリスクを公的部門が引き取ったのです。FRBが自らヘッジファンドになったようなものでしょう。
7.金融(流動性)危機から財政危機へ
マーケットのテーマは金融危機から財政危機へ移りつつあります。未曾有の財政出動のため大量発行された米国債を中国が買わなければ、結局FRBが買い取らざるを得ません。ここに通貨増発によるドル価値の希薄化が懸念されます。
ここは補足が必要です。ドバイショックをきっかけに欧州中心にソブリンリスク(国家債務のリスク)が懸念される事態となっています。日米欧の国債格下げの問題が2010年はクローズアップされるでしょう。
8.恐怖から不安へ
投資家心理は、恐慌を恐れるような恐怖心理からは解放されましたが、心の傷は消えず、金融システムや基軸通貨ドルへの不安が根強く残ります。
ここも補足が必要。ソブリンリスク=財政破綻という恐怖心理が徐々に顕在化しつつあります。通貨面でも経済構造に対する懸念はドルからユーロとして円にも拡大。2010年はドル、ユーロ、円の弱さ比べに拍車がかかり、その中で人民元が自由化されドル売りエネルギーの受け皿になるか否かが注目されます。人民元に関しては、本日発売の日経マネー連載コラム「From ゴールド To ワールド」にて詳説しましたのでお読みください。
9.ディレバレッジ (レバレッジをかけない傾向)
投資トレンドも激変しています。レバレッジをかけると売買益も売買損も数十倍に膨れ上がることを思い知らされたからです。米国の家計部門でも、レバレッジで膨張した債務の返済が遅々として進みません。
10.原点回帰
投資方法を見ても、複雑な仕組み債などが敬遠され、分かりやすいベーシックな手法に回帰しています。リターン最大化よりリスク最小化が特に意識されます。
11.投資スタンスも、じっくり、こつこつ長期で
短期の売買益を追わず、コツコツ買い増し、じっくり長期に保有することが改めて見直されているのです。株でも投信でも金でも、ドルコスト平均法が、地味でエキサイティングではないけれど注目されるようになりました。